2 / ⅺ - 黒き蜂 -
「───的中。相変わらず貴方は悪と
数秒遅れて地響きと巨大な爆発音が彼等の元まで届いた頃には、既に事後から数秒が経過している。
眼前の光景は一転し、そこを飛んでいた筈の天使の姿はない。
あるのは真新しく立ち込められた黒雲と、その煙霧を巻き上げて海へ堕ちる航空機の姿だった。
「だから言ったのにね。
ボルトハンドルを起こしてロックを解き、そのままボルトを引いて排莢する。
二発目は必要ないのでそのまま薬室を閉鎖する。
女性は衝撃波で少し乱れた髪の耳元を手櫛で整えながら、この光景には似つかわしくないほど優しい笑みを男性に向けていた。
「貴方の場合だと一撃必中だから【蜂】って言葉を考え直した方がいいのかしら」
【蜂】───蜂の巣にする、という言葉がある。
彼等が行ったのは、暗殺───先ほどまで我が子も同然だった鋼鉄の天使、鎌瀬を乗せた《
「で、【蜂】の依頼主からの最後の【蜜】は、“今回依頼されて製作した航空機を無人仕様にしたもの、並びに対『
「これは……そうね、貴方は少し遠くから待っててもらってもいいかしら? 私と一緒とはいえ貴方を他の女性に会わせるだなんて許せないもの」
こんな時でも平常運転だなと、青年は嘆息で返事をする。
「【目】はもう貰ってるから、このデータを渡して初期化したものを、そのまま受け取る手筈になっているのよ」
彼女は自分の目元を指差しながら言う。
一見すると普通の瞳だが、彼女が言うにはそこにはカメラがあるとのこと。
超マイクロカメラを含んだコンタクトレンズと、洗浄液には大容量の液体メモリ───それが彼等の求めていた【目】である。
「なるほど……しかし“汚職の証言記録”まで【蜜】で渡すとなると、これはいつの間にか政戦に巻き込まれた感じなのかね」
「どうでしょう。それはないんじゃない? 私達の存在は
その物言いに心当たりがあるのか、男性はやや引き
「貴方はこれから随分と忙しくなりそうだけど、ひとまずここは私に任せなさいな」
だから───と、彼女は一段と明るく満面の笑みで彼に言葉を投げた。
「ここで大人しく待っててね、ゆうくん」
「そ、その名で呼ぶのは止めろ」
その青年は、不意の変化球に動揺しつつも、彼女のことを叱るように手刀を軽く頭に運ぶ。
コツンとも言わないほどの柔らかい感触に、女性は大袈裟に痛がっていた。
「───闇を
彼は咳払いを一つ吐き、女性の左手を少し引き、手の甲に口付けをしてそう述べる。
「我ら【
男性の……ゆうくんと呼ばれた男の言葉に女性は微笑で応え、去る背中を見送る。
闇に溶けたことを確認したのち、彼と逆方面に足を向かわせた。
───一つの理想郷を巡り、二つの
「お初にお目に掛かります。無国籍テロリスト組織【
『project - Angel Wing』は、更に加速し、飛翔する。
「初めまして。添氏執政局総督代行」
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