1 / ⅷ - Make KAWAII, Make Life -
「あ、あかねちゃん! な、ななっ、なんでこんなことしたのっ!?」
羞恥心に悶えながら赤面し混乱している真紀奈を
「いやさ、せっかくのチャンスなんだから小郷くんにしっかりアピールしないと」
「アピールって、だからって、こんなっ!」
自分はあかねのように女性から麗人と謳われるようなモデル体型ではないし、ましてや肌を露出させ世の男性を魅了させるグラビアをこなせるプロポーションでもないと思っている。
そして何より色仕掛けが出来る度量は持ち合わせてないと真紀奈は言いたげだったが、もう何から言ったらいいのか訳がわからないなんて様子で、未だに落ち着きを取り戻せず
「そ、それに何も、こっ、ここ小郷くんの前でなんて……っ!」
このような姿を、ましてや想い人に見られたくなかったと真紀奈は訴えるが、残念ながらというか今の真紀奈があかねに何を言っても火に油を注ぐだけなのだろう。
「じゃあ他の男子だったらよかったのかな?」
「っ、そ、それは……違うけど」
案の定、俯く真紀奈を逃がすまいとあかねは彼女の顔を覗き込むように見つめ、追い討ちを掛けるが如くわざとらしい口調で問い尋ねる。
「素直に認めちゃいなさいよ、小郷くんじゃなきゃ嫌だったんでしょ? 小郷くんが良かったんでしょ? なんだったら小郷くんにならその奥まで───」
「も、もうっ! あかねちゃんのイジワル」
「はいはい、悪かったよ」
言葉ほど反省の色を見せていないあかねに、真紀奈は溜息を一つ零す。
含み笑いを浮かばせながら店内を楽しげに廻る彼女の姿は敏腕デザイナーというよりは悪戯っ子のようで、そんなあかねは店の奥でひっそりと存在感を消そうとしていた一つの影を見付けた。
「……で、小郷くん。貴方はそんなところで何をしているのかしら? なんだったらさっきの真紀奈を写真で撮ったし、後で送ってあげても良いけど」
「鬼畜か!?」
彼はあの場に居続けるのは流石にいたたまれないと、誤魔化すようにメンズファッションのコーナーへと移動していたのだ。
あかねはちょっと待ってと言いながら、売り場の中を廻り手際良く衣服を取り出していく。
彼女が取り出したのは、清潔感を演出する爽やかなホワイトデニム。それに合わせるのは大人の気品を持つワインレッドのシャツで、黒いテーラードジャケットと合わせれば、上品で洗練されたシルエットを作り出すことが出来る。
ジャケットとパンツのモノトーン調の中に注ぎ入れるように溶け込むシャツの深紅の色合いは、煩わしさを感じさせない自己主張が心地良い。
王道のファッションは着こなす人で表情を変えるもので、まだ幼げの残る顔立ちの有土の場合は堅苦しくない印象を与え、なかなか悪くない格好になるのではないだろうか。
「あら、この色合い嫌いだった? 結構似合うと思うんだけど」
そうしてあかねが選び出した衣服を、しかし有土はあまり良い表情では見ていなかった。
「そうだね……白地に真紅、か」
それは嫌が応にも、古傷を抉られてしまう
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