R306

proof

 とばりすら遠くそれでいて郷愁を抱かせる大いなるものとして窒息してしまいたい。

 朝靄の影に 揺れる雲雀の囀りに、ただそれに耳を傾けただけであるのに こんなにも自由でいて、どこへも行けず いずこへも辿り着けない。

 なにもしらない小さなほのおで、ただ羽ばたいていけ、それでいてどこまでもしあわせにあふれている、照らされるだけの世界だった。


 あと何回目を瞑れば、この花は咲くのだろう。

 少しうたたねした薄地のキミが瞬いた時、きっかけが有り触れたことで、天井に星界は交ざり逢えた、きらきらとした神話になりたくて僕らのてのひらに、くちびるに星を描く。

 それぞれの背表紙に思いの丈を膨らませ 透明なセロファンがくすんでいく。

 ああ、種も仕掛けもない しろいかみを 愛玩する。そのさわりを 握っている、これは夜伽話でしか、なしえないのに。


 青い蒼い碧い、それだけの唄だった風だった。

 岸壁から臨む、季節の崩落はどこまでもブルーと呑まれていく、そしてぼくらもそのうち、渦に巻き込まれてしまうのだろう。

 しかしあと少しで 彩を奔らせ足元を救われるのだ。

 そのくせして、果てしなく空は深く手が届くほど墜ちて、足掻いてもここはそこにしか、ありえない 程 腐海と樹海との境を失くしてゆく。

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