一聯

何もかもちぐはぐなもの、ツーカーの烏に答えは詰まっていたから

腐りもしない箱に置かれた 小さな僕のお人形

その緋 入れた紅茶、冷や汗と書く湯呑

            貫通した右胸に、追いつけない薬莢が、

        硝煙をあげたままの葉巻の火花に 燻るものが 

    ピンホールから焼き付いた残骸を嚇しとっていたのだと


首をすくませた、夏の盆の陽炎の夢に降りしきり


模造紙いっぱいに育まれた夢は いつかの寄せ書きみたいね

    真っ白で真っ黒な腹に収めたもう 口笛で誤魔化した、

        鳩時計が正午を目指しては鳴りやまないでいる


  部屋の真ん中には掃除した後にはえていらっしゃる、

  半畳ほどの、コンクリートのだんまりと

  玩具の兵隊の頭をえらく小突いている。蝉時雨の空想


それでも

       薔薇と共に女は朽ちていくのだろう。これほどに

       愛されているということは、白日に晒されたこの

       陽がよく知っている。瑞瑞しいだけの涙を幾度も

       流し 尽くしても尚 離れようとはしないではない

       か。あの夏の平行線へ 飛び去る影がある、すべ

       てを終えた燕であるか、それとも 入道雲へ墜ち

       た 光の帯か。


それは遥かなる眩暈 仄かな陰り、

そして香気という味蕾

つまらないだけのいまを流して生きる 

ただの蜻蛉たちももうすぐに、散り散り

                         ぬけがら。



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