たとうがみのもり

 死の森を歩いているわけでもない、幻を死姦する 女の禿げた山を追う これは経路のたがう鍵盤音色だ。

 いかれたあしを戸口に挟み込んで、右往左往する鼠の尾が ささめく。そこには 地が足が私につながってみえているのだから、私は生きているのだと思えよう。ここちのわるい めぐりあいを そこかしこに認める湖畔は。

 闇という彩を供え、私の足取りは確かに進んでいるのだ。

 扇動するものはいないが未知は開けていることは、知っている。みぎもひだりも反面であれば、どちらもいとわない、彼方の黒き瞳は穢れなきことと、信じ、なだらかなものである途が登りでも下りでもなく、この根底にある。

 この森が何を示すのかはわからないままで、私は無我夢中で歩み続ける。

 嘘に紛れて偶然を装い額に触れる、過去に産んだ脂漏の苑、擦れた濡れ羽が目にかかり、熟れたところが上気する。祖の海は限りなく透き通り触れもない。そして暫しの余韻と緒として、ただ眼前の野路に未来を延ばした水平線がこちらを覗き込み、たまゆらばかりの約束と胸に宛てる。

 傷んだ羽根、穴の広がる腹、口封じの域。赤い弦、過ちとほどく

 そして眩しく瞳孔を動向と移り代わらせ、わたしたちひとびとの、いのりは

 いつかの深遠に昇り詰める、年輪すら滲んだとばりに夜 模様。坂道を下る、まわりめぐって、傷つき嗤い乍ら、明日を予期する警報が、瞼を重くさせて いきます。

 待ちくたびれた、空の間取りを描いては、こんなにも曖昧に侵蝕を齎すことを、闇雲に先を望むままに昊を仰いだ、

 ぎらぎらと興した 熱。

 そして細く開かれた薄明を信じて、これが蜃気楼とともに歩まぬことを。

 どちらともまばゆく、思い描いては 歯がゆく

 どうとでも、ときと往くだけだった


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