臍帯

おとこが 小舟に乗り込もうとしている。

私の白いセーターが 何処かに出かけている、

ぼくはそれを知っていて ここに誘い込んだのだ

その先々は乱れ 砂嵐の向こう側を君だけは愛して。


季節はもうすでに頬を染め 大輪の花を咲かせては散らせ

光と闇のあわい、裂けたところに。はらはらと 泣いている 

ことに 気づかないように、

大きく口を空けた大蛇が塒を明いて 育もうと殻を埋んだ


土手に並ぶ露天には腐ったような黴たような、

成熟した彩を魅せる宝石が競いあい

様々な人種と性別を混濁した糞みたいな妙薬のせいで

またひとつの魂が産まれたようだった


ひとつ ふすねた「螺業」が 背中に巻き付いている

キミが惹き殺した おんなの、情念が ほら

君ら凡てを守っている。

知らぬものでもあるまい。

その血潮は滾るのだろうよ。

今砂浜で身を焼いているのは、まぎれもないきみであろう


通り過ぎる夏の 驟雨は 冷やかし間張りの 雑魚の群れを 少し流すと

きっと明日もてんやわんや、また祭りが開かれることだども


アスファルトを弾く酔いだけが取り柄の碧鯖たちがばたばたと

凍り付いたものに身に服して、

そしてすべてを呑み込む流星群は躍起である。

さざなみが照り返すように まさらしく

本降りの唄は涼しげに秘されるものがあり

振り向くなかれ。と、金魚袋の透かしに堕ちたものたちに口を継ぐ



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