anniversary

 生成りに到ったカーテンが風に遊ばれ 意志を持った。羽を片方 無くし、肩を擦るよう、痛々しく微笑む。


 夢を見たのよ

(カノジョはいった)いつかどこかでたしかに出会ったはずだとも(カレは知っている)

 雁字搦めの蛹に慣れたふたりのゆくすえは 永遠と同じだけの熱を奪っていく、けれど その輪郭がぼやける春寒 掴める確度で 冬空から舞い落ちるのは 灰であったはずだ。

 まばゆくて 暗む そして真っ赤な誓い。ちぐはぐなパッチワーク 替え玉に見せかける。

 タグがついたままの登録ナンバー、水墨画に彩る、モラトリアムの群衆 繁華街の錯綜 ぴっちりと詰まった 箱の中の蛆虫共。

 今更 僕らを包んでしまうのか、今はもう 君も こうなる前に早く殺してしまうべきだった。まなこなんてあけるんじゃなかった。

 鏡の国のおはなしを聞かせてくれた (姉さん。)その質量は、天を 地を 今を超えるだろうか。

 ちょっとお願いがあるの。こうして、重ねられた指先で辿りついた。筆に泪を零して蛟を奔らせ、そして迎えに来て欲しかっただけの、クリオネの 純心。


 君が僕にあり、私が彼方にいる 消えない記憶を塗り替えるように 価値観を殺す。

 口づけを横暴に投げ捨てる、これでは永遠の処女だ。それは手向けたばかりの愛にそっぽを向いた。あれは誰だったのか 区別は不要の結果論だ。


 眠りに往くよりも早く夢を叶え 壁は糖度を保つ 月の兎は、それに影を切り抜いている芋虫とも。ただ影を千切っては 時の雲海に 戻す。嘆きの薫りは満ち満ちて、塗り込められた地表には 誰一人愛さない ドライフラワーがうつりこんでいる。

 色褪せた跳梁跋扈=あどけない眼差しは透き通る黎とする。予測した希望を 新しい息吹を溢れさせた、すべてを知るものが どこかしこに揺れている。罪状は冤罪に近い 真珠色は二枚舌に収まり 構えたように舞台挨拶を行い続ける。

 くらいだけの世の中ではあるまい。そう思えば、胸に空いた穴に、不意に蝋燭が か細く灯る、手筈だった。説明書どおりに 凍り付いたままの 双子の桜坊を ほっぺにホオリコム。1つは過去へ一つは未来へ ほんのりと色づいた まだ若々しい酸味を 忘れることができないでいる。ことに築いてしまった。傷んだ藻塩と誘拐寸前の金平糖はもう充分 ポップスターには至らない 年代付箋を 貼り付けられた。


「薔薇の迷宮論」


 虫が這うような、 抱えてるようなもので 愛しているだけの、そりゃあ今もあるだろう 歪なひかりだ。精神的鈍痒は過激に自らを置き去りに纏わせる、唯一の香気だった。

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