私が其処にたどり着いたのが何度目かはわからないけれど、ここが彼岸の地で私は死んでしまった。このことだけが懐かしく思いだされる。どうして今まで忘れていたのだろう。

 鍋底に焦げ付いた暗唱を繕いながら

 その小鳥、

 なぜこんなことになってしまったのか、

 この話を聞いた私は運命というものを信じたくもあった。

 毎回嫌気がさすほど打ちのめされ、もう二度とこの場所に来ることがないように思考を巡らせることを、不意に閃きのように悟るのをどうにかしたい。

 ただの偶然であろうことに、すべてが霧散して意味だけを抑える。ならば、私はそのえらくへたくそな囀りを風潮する、この口は滑って見せるばかりの渡り鳥の皮を被ったアホウドリであったものだから。

 どうせまた無駄に終わるのだろうと思いながら湖畔の周りをうろついている。

 いつ終わるとも開かれるともわからないサザナギ、あやふやなときが案外心地よい、この先、何か起こるのかそれで終わりなのか。これが今一番大事なことで一切思い出せないのに不安には感じないのは、もうとっくに先だけが決まっているからだろう。

 その通りすがりのものに何故か変わり映えのないゆいいつの唄を、こうして己ではないものから語り掛けるよすがに、誰しもらくに捧げ続けられるのだと信じ。

 だからいまこうして座敷に牢を頂き 開いた口にただ飯を喰らい、ただのうのうと天を見上げるばかりの役立たずでも、涙を呑む。それで私がなくとも、もうとこしえに天はどこへでも懐けるのだろうと、

 終始ご機嫌たるものであった。


 それはただ安易なものでしかない

 けれど届かぬもの弛まぬもの

 そこを剥ぎ取れば側面を反す、上げ底の日々も絶え間なく霞んでいる

 朝靄の奥に覗くひとときの光明を繰り返して



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