芳墨

メランコリアの新芽が蕾を点けるとき


つぎつぎに孔に放り込む音符たちの末路が

己の熱を遷すように

奪われる氷層の奥にやはりマグマが滾る、

わたしたちはまだ域を拡げていくことができる

柄杓一杯にどれだけの偶然が重なるのかはしらない


確証を選られぬまま枝分かれした

数式は飽和を繰り返し応えを導き出せずにいた

このざまをどう受け入れても構わない

熔けてしまったものを形に戻しただけ


空心を定めいる

五線譜は静寂を書き出してみる

愛されたことだけ手織られて仕舞われた


そして春が来れば凡てみなもとへ ほどかれ、辿りつくの

はじまりの海へ、母なる御許に流れ去る

鼓膜はもう意味をなさず、

灼熱に打たれ華麗に萎む光にとどくように


地に伏せた 花の散り際を 風に熨せて

雨樋から逃げるようにと

明日への粒が溶けだして夏の馨りに沁み込んだ

霞に閉じ込められたものども


冬色の街に捧げうる彩ばかりを奪い、きみに預けていった

好きと罵って逝ったままの呪縛に、囚われてしまったheaven.

底流は毒毒と歪みなく上澄みに孕ませたまま

惚れた腫れたを鮮やかに呑み込むようにゆきたい。


ただ生きたい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る