カノープス

 その女神も摩天楼の隅に追いやられ かつての栄華は見る影もない。ため息のように息を吸って吐く すると私は膨れ上がるので エソラ空らの景色は何らは変わりはないというが 、沸き発つは恐怖であろうが、期待であろうか この体は難く自らの意思では動かすことも叶わないのに ほら、また風が私を呼んでいるように どこまでもパージされた希望を孕ませ 上昇気流に乗る。

 ルート66を滑空するとそのうち見えてくるはずだと教えられた 目的地には辿り着かない気がする。

 なんども潰れた眼で知ったはずの痛みも苦しみも地の底に命を興し人型に催した痕を遺して標と置く。

 荒々しい岩肌の角に寝転がるバイソンの 尾を踏んでしまったのがいただけないのか、突いた背骨の核までの距離はだいぶ遠く 何の影響はないはずなのに ヒカリにヤられた眇目だけが疼いて仕方がないが。運命の彼女はまだ見守っているようで私の視界の隅に微笑んでいる。

 これはきっと私が目指すいただきは この見えている現実とは違うのだろうと。そう思いながら幾度旋回したことかわからないけれど……

 まだ希みがある気がしたから。

 眠りについているように運にかまけ 錆びた体を引きずりながら 私はただ風にのるのだ その星を真実と崇めながら。

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