徒浪塡 星回り

 また一つ年を重ねても なんの意味があろうか(合掌)


 どうせ生きていても死んでいても存在は消えない。ほとほと どす黒く饐えたものを思えば。唾を吐きかけて呑み込んだ、さかさまつげの嘘つき 氷雨が降り止まぬような星界に雪ぐ。そのてのひらには盃、なにもかもが 無い 虚ろ現世を永め、眺め見ただけの光景を叱責する。


 あらん限りを並べたて 見出した モノでも

 敗れた草鞋に点いた泥は渇いている。なにをいまさら

 潰れた眼で澱んだ正解を掴んだ。もうおそいだろうに


 まぼろしであろう銀世界はやや眩く、底に芽生えるであろう芽を圧し殺して、厭に目頭だけが悼んで どうしたものかと足を止めたものだ。

 築くことなく 踏み潰したそれは 塵や誇りのような 無用の者たち。ただ確かに息づいていた 血の脈動、このつちくれにはその価値が確かにあったはずだ。

 黒く乾ききった土壌に横たわる 私たちの末路のようだと思いたい。

 ただなだらかな死を待つばかりの……


 何も見いだせない紛い物の想いばかり、すり合わせ 愛や恋だと喚き潰して 重なりあって育むばかりの。「命」


 いい加減うんちく垂れずに勝手様々 往けばいいのに、この汚らわしいものは 結局なんだと言うのか。うじうじと取り憑いて.廻り巡る。哀れなものを見れば寄せ集る その血潮に従順な者たちが 手を差し伸べ涙する。


 このそれぞれのいきざまの、柳は緑花は紅。出会いと別れの迂回路の先に何があろうか。

 桜吹雪の小道、向日葵のうたう丘、曼殊沙華が手招く月夜

 果てしなく募る思いもあれど、それはもう白銀の未知ばかりに積もっていくこと。

 くだらない世迷言にくどくど ふらつき魅せるのは 私が彼方に構ってほしいから なのやも、しれぬが。


 そのものは 疲弊して 草臥れ ただ、その記憶だけ鮮明に遺して 枯れ寂び朽ちゆく。

因縁まにまに


 さて今来た道を振り返りこの途絶えた足跡に姿を重ねみれば 皆々、同じところに帰り着くのだと悟るものだが、さて我が身いつまでたっても朽ちず、やはり刮目しようともそこにただ転がるばかりの死の舞踏ではないか。

 然し今躰は動かぬ 思いも声色を拝せず 酩酊が呂律を啼化す。静寂の封廟が 我が身を拱くように 夢を見て仕舞いたいのに

 光も闇も我が身を殺していく。

 ただ 私の影だけが皆に媚り憑くという算段。触れてしまったのだから穢されて逝く その彼方の未来が私に拠って犯されるように 全てが絡まり遭う 不運を抱いているのだろう。

 ただ、通りすがりの者に 憐れみを拵える ときの無駄とも云えば少しは癒えようか


 華の美々しさを受け継いだ種子に 願いを込めて。などと卑しい欲だけが 殆.真実かと。

のさばる繁栄


 そのうすら笑みは 涙は真実であるか?

 対岸の君はどうしているのだろう。なにを選び取ったところでその節々は傷み腐っていく、死ねぬ答えが脳裏を掠め、未来を作り出していく。縋りついた希望、くだらないかな この手の内に湿しているが 届かぬように、押し殺して抱き潰す。

 さすればほら届かぬものだ。夢を持ち続けられる こんなことでしか生き長らえない 夢は夢であれ 高く高くあり続ける未来でいい。空の春を囀る禽になれたらいい

 中身など何もいらない 自我など必要なく……ただ、誰かの心に侵食する 嘘であり続けたい 身体という器を捨てることができるなら 、想像だけが私を生かして 私は幸せになれるのだろう。

 私に触れたもの全てが私を育んで行く。ですからもう終わりにしていただいてもよろしく、後悔がないように 常に今だけを思って 目を瞑りたいのです。

 今にある未来なんて 夢も希望も 塗り潰されるほどの 混濁に溺れるだけ 酔狂にも苦しみだけを排出してこんちくちょう に ラクに乗り切れるわけがなかろう。


 ただ、頑固なもので、私は路傍の廃石でありたい。

 意地らしくれた姿を赦してくれる 柔らかな光に この目を潰されながら 薄らぐ感覚に ドウカされたい。ノチ、はいらないから どうにかしてくれ。今だけで埋め鎮めて

 未来を殺しておくれよ。ナア、

 葉擦ればかりが容易く胸に響く星回りのひとつひとつを数えながら我らの死に様をただただ想う。(徒浪塡 星回り)



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