熨斗


 

 書類上アウトライン。バックミラーに伝染す前向きな自分から出る消しカスは センタリングのタイヤ痕。今も手が届かない面影を、ただ捨てられないでいる。氾濫する車列の外側はいつだって斜陽を描き出し 貪欲に記憶を備え付けている常緑樹は、いささか悶えそびえ、不格好なあなたとわたしの距離を縮めるよう不遜に煽ってはもたれ掛かる花を忍ばせる。

 憶えているようで滲んである 水玉柄 誰のワンピースだったか、

 夏の暑い盛りの水辺にたまった緑色の藻の生きた泡 酸素カプセルを寄生虫に活き遷す。新たな住処を目指す積雪表層の民は、頃合いを見計らって形に魅せられて硬化を諮ると、秋晴れの元では皆羽を失くす進化の過程で 秘色を費やした悪魔のしっぽと アルマジロたちの花開きが 母胎に宿る頃、雪虫が走り回る。

 膨張した腫れ物の祟りのような禍々しい光沢のフリンジ ひと房、隙間からカクテルを投入する。初期の給仕は足の早いものから順に内側へ、内側へ。ようやく熟した所で空いたお口に。漆器に見立てたオークション会場まであと少しの、あの頃の退廃美だった。

 理論上は まだ始まったばかりのハタチそこそこのがきんちょ。人生は常々誕生日だから 今日も泳ぎ始めるころには また奮発した アクアマリンに 降下していく 勝手な夢。ロードが落ちきらないのに 開いていた席から わらわらと現れるお客たちに、早々舌鼓を 明けわたしたい。はやく 急かさないで ゆっくり 奔りたい 私の風潮を 見出さないで 賭してしまっても。

 これは夏の夕暮れにほど近い那由他へのみちに等しい。

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