いいなずむ
―― 宵闇の誰そ彼とは錆びた小鳥のようだ。
黒い翼を一枚づつ無くしていく。丁寧に剥がされた濡れ羽色を鱗状に、ならばれいく 地に脱したそれが鏡写す。わたし が、水面下の中身なのか?
それは赤い屋根のおうちに罹る、先入観をうえつけやしないだろうか。その背に這い上がる煤けたものたちは、咲いては散って見るのだから。近づけば外れていく、明々備わる大木の実となる。
「これは削げた外観までは真綿を詰められ、ひとりでに浮き足だっていくという」 与太話だ。
雨上りにうつりこむ水たまりには我々の視界すべてにおいて、だれにでも宿る我が家はそれぞれ姿を変えるだろうが、永遠と続く街並みがある。
その中で帰り道を塞ぐ真鍮でできたソファーに寝転がり嘲笑う……それは……見捨てられた烏の子とさめざめ、嘆いている、今日も明日も何ら変わりなく、私だけが!
影と共に地に楔を打ち付け 嫌が負うでも進んでいかなければいけないなどと。
(さんざめく)
この胸を締め付けるものが 萎びた花弁のひと部屋中に 集って要る、身動きが取れなくなるまで 怠惰でやり過ごし、そのうち勝手に垂れ流す これが、結果、腹が減ってはそこらにあまりある恩恵ばかりを喰らう。
有難がることもなく 細く錆び付いた蛇口から湧き出る砂金は、湯水の如く少しも減らなかったが、生温い光を遺している境内の鐘の音も幾日も尽きることは無い。
今あるものに対し
どちらともなく、それに少しばかり飽きてきたところだ。
もし神がいるなら、願いを叶えたまえと宣うのだ
この言い尽くせない蟠りだけが漂う、私はいったい誰であると、
お主は知っているのか?
すり抜ける雑踏の合間を縫って一息に処す。咽喉科までも門前払いを喰らう、鼻が効かなくなった私は。視覚も聴覚も幾許もめくれあがり 皆とおなじく、おなじくして腐って そのうちあたりまえに担っていく。
誰の目にもおなじヒトガタであると知る その光、あるところ全て影があるという呪いは、
誰の足元にもあれは、重力という名の足枷を外す時、祝いの宴は既に弛緩している。
私たちは嘗て人間だったとして、まるで宵が回るようにいつまでも昏い 子午線の筆には、私の身を移すことがなかった。
燐火を侍らす 削り花はまだ 真新しいものであったのだと 知っているが、然し饐えた香だけが我が身に沿うようであった。それが住めば都 魂の器である、霞を喰らい続ける、私なのだろう。
「森の社にはなにかが棲んでいるらしいね。」
噂話に釣れられて 又ひとりあるき、餌に食い付いた、ものたちが 今夜も 集まっては、おしゃべりしている。
我が風見鶏はいつどきを示しているのか? この胸に吊るした方位磁石すら もうアペとペに金切り声を掲げる、そして何時までも残響と嗤っていた。それは散々齧られて、締め括られたとも 癒える。今夜は此処までと好い鎮んで、私という世界はあるようでない、靄のようなものだと、締め括った。
そしてただ聞こえてくるは、このみのざわめきだけ。
古びた砂時計は役目を終え、風に揺られながら、時は、嫌というほどてんやわんやを繰り返す、波辺の夜のような。
生まれては死んでいくもの(好い滞む)
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