黒縁眼鏡

 田舎者の君から目を逸らして 都会に足を向けて見た。片鱗を掴むには地下壕もなくただ、

遠くまで見渡せる一本杉だけがあった。

 

知らぬものは現れてこない。

 待ちくたびれ思い巡らせても いつかを呼んだような掠れ声で、囁くものは、

  吹き抜けるビル風の隙間を埋められないまま、孤独に戦慄いている。

  箸と端の空白を繋いで ひとつの匣を覗き

 ただそれだけだった。そらは青かったと誰かが言ったようだ。

 

分かりますか?見えましたでしょうか?

センセイは耳元で景色を指したが、見開いたけれども、そこにはだれも到らなかった。

 

 壊れた僕が、差し出したものは、ときを留めた懐中時計とも、行方すら知らずに

 足踏みしては行列をこさえている 奴等に お別れが言えない。

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