第2話 香港旅行二日目(ヤバい)

 香港到着二日目、僕ら三人は、ツアー客と一緒に観光しました。


(もちろん僕らもツアー客です)


 僕は昨日の父との喧嘩で不機嫌でしたが、浅水チンソイ湾の天后廟ティンハウミウに行くと聞いて、気分を少し盛り返しました。天后廟は名所で、ずっと行ってみたい場所だったのです。


 今日も凄いむし暑さです。

 それでも天后廟に着くと、僕は興奮しました。そこは寺でした。巨大な中国的な観音像が出迎えてくれます。他にも羊や獅子、魚、海の守り神の像が無数にありました。像の色彩や造形は、日本人の感性を大幅に飛び超えているようです。とにかく赤や黄色など、派手な色を使うので目立ちます。


 その時、後ろでパシャパシャ音が聞こえました。振り返ると、父が僕をカメラ撮影しています(笑)昨日、僕を怒らせたので、コミュニケーションを取っているつもりらしいのです。むこうはこれで和むだろ、という言わんばかりのカメラの連写です。

 僕はイライラして、「やめろよ!」と怒鳴りました。


 そして僕は思い切って、両親にこう宣言しました。


「明日は、僕一人で行動する。二人は通常通りツアー客とマカオに行ってくれ。僕はホテルの周囲の街(九龍クーロン)を見て回るから!」


 次の日──香港旅行三日目の朝、僕は朝七時半に起きました。朝食を取った後、僕はホテルの部屋で両親に、昨日の宣言通り、香港の九龍地区を一人で見て回ることを伝えました。父はこれまでの二日間のことを反省し、しょげているようでした。つぶやくように、「悪かった」と……と母に向かって(笑)言っていました。


 結局、両親は、他のツアー客と一緒に、マカオに行ってしまいました。


(マカオとは、香港島から船で行くことができる土地。香港島から西にある。1997年当時はポルトガル領だった。街の雰囲気はアジアというよりは、ヨーロッパに近い。カジノがある)


 午前十時頃、僕は意気揚々と、一人でホテルの外に飛び出しました。しかし、僕は外国の街を一人で歩くのなんて初めてです。そこで、ついに事件が起きてしまうのです。

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