戦いの火蓋切られる
シルヴァリア王国、王城。
「お父様、怖いですわ」
王女ソシエは国王の隣で震えていた。何が起きているのかは聞いていた。大勢の魔王軍のモンスターそれから、魔王軍に寝返った人間達がこの王城に攻め入ってきているのだ。
多くの兵士たちが防衛に出向いている。しかし、寝返った冒険者パーティーの力は絶大であり、苦戦を強いられているそうだ。
「大丈夫だ。ソシエ。そなたは私が守る」
国王はそう言った。何となく連中の狙いはわかっていた。連中の狙いはこの王国の地下にある魔王の魂のうちのひとつだろう。封印されている魂を解放しようと考えているのだ。
だからその魔王の魂を受け渡せば自分達の命は助かるかもしれない。
その後用済みとなって皆殺しにされるかもしれないが。しかしそれでは魔王が復活し、世界がまた混沌へと落とされるやもしれぬ。だから国王は命に代えても魔王の魂を守らなければならないと考えていた。
王城からしばらく外へ行った場所である。城壁の外の出来事だ。多くの兵士がモンスター、それから四人の元冒険者パーティーである紅蓮獅王と交戦をしていた。
「ひゃっはああああああああああああああああ!」
アレルヤは剣を振り回す。魔族の力により強化された力は絶大だった。
「うわあああああああああああああああ!」
「ぐわあああああああああああああああ!」
一気に数人の兵士が吹き飛ばされる。
「くっ、くそっ! こいつら! 強いぞ!」
「援軍だ! 早く援軍を!」
兵士達がわめく。
「全く、手ごたえがねぇぜ!」
アレルヤは呟く。
「気を抜かない事ね。そのうちにきっと、冒険者達がやってくるわ。漆黒竜王……それからあの子達、白銀竜王もやってくる。あなどれないわよ」と、イザベラ。
「わあってるよ。けど、それが俺達の狙いだろ」
「ええ……それでいいのよ。私達は。結局は私達に力を授けてくれたベリアル様のお役に立てればいいのよ。私達は撒餌なのよ。獲物がくいついてくれればそれでいいわ」
イザベラはそう笑う。
「さてと。一匹、獲物がくいついたようね」
漆黒の剣。そして漆黒の鎧。
一瞬にして戦場の空気を一変させる、黒き騎士が現れた。暗黒騎士(ダークパラディン)。空気が震撼する。まだ闘ってもいないのに、圧倒的な強者のオーラをその黒き騎士は放っていた。
「アルタイルか」
アレルヤは語った。
「……魔族に魂を売ったか。同じSランクパーティーだった者として情けないぞ」
「うるせぇんだよ。俺達はお前達と違って強くねぇんだよ。才能がねぇからな。強くなるには悪魔に魂を売るしかなかったんだよ」
アレルヤは吐き捨てる。
「それで得た力の結果、お前達が得るものは虚しさ以外に何もない」
「……へへっ。もう遅えんだよ。俺達の魂はベリアル様のものだ。お前達の言葉など聞くかよ」
「よかろうならば」
アルタイルは剣を構える。その名はダーインスレイヴ。名高い魔剣である。
「虚無に返るがよい」
そのうちに後衛にはロザミア、そして他のメンバー二人も姿を現す。
戦闘準備は完了していたようだ。
「へへっ。Sランクパーティー同士のガチバトルか。燃えてきたぜ」
アレルヤは笑みを浮かべる。こうして紅蓮獅王と漆黒竜王の闘いが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます