魔王の魂
「そうですか……そんな事があったんですか」
冒険者ギルドに戻ったクライン達は受付嬢に報告をした。
「Sランクの冒険者パーティーが魔王の軍門に下るとは、これは由々しき事態ですね。すぐに上層部に報告します」
受付嬢はそう言っていた。これにより紅蓮獅王は冒険者ギルドのリストからその名を消す事になる。そして失踪者を救出したという事もあり、白銀竜王には規定の報酬が支払われた。
だがそれくらいの事である。魔族に対する根本的な解決とはなっていない。
それからの事だった。紅蓮獅王及び魔人ベリアルはその消息を絶った。しばらく、何の動きが見られない状況が続いた。
一方、その頃。魔王国に存在する魔王国での事だった。魔王城の最奥部。地下室。そこに魔王城の中核となる存在があった。
カプセルのような物体の中、水中の中に魔族の男性が存在していた。息はある。しかし、そこには魂というものが存在していなかった。
抜け殻である。しかしその美しさ、存在の雄大さは抜け殻でありつつも、その存在が偉大なものであると感じさせるに十分なものであった。
「……このお方が魔王様」そう、イザベラは言う。
「そうだ。このお方が我等が信仰する魔王様だ。200年程前の戦争により、命を落とされた。本来魔王様は死んでも蘇る不滅の存在。しかし、卑劣な人間達は四つに分かれた魔王様の魂を封印した。
そしてそれを四つの国、それぞれに保管をしているらしい。魔王様の魂を完全に滅する事はできずとも、封印し保管しておけばその場しのぎにはなるからね」
そう、ベリアルは説明した。
「それでベリアル様。俺達、紅蓮獅王にご命令とは」
「王国シルヴァリアに存在する魔王様の魂のうちの一つを解き放って欲しい」
「お安い御用ですわ。ベリアル様」
そう、イザベラは薄い笑顔を浮かべる。
「必ずや魔王様の魂のうちのひとつを俺達紅蓮獅王が解き放ってみせます」
アレルヤも醜悪な笑みを浮かべた。
それなりの時間をおいてからの事だった。
「はぁ……暇ですね」
と、シアは言った。
「暇というのは良い事だぞ。世界が平和だという事だ」
と、セシル。
四人は冒険者ギルドのラウンジで待機をしていた。待機とは言っているが実際は休憩のようなものである。
「それもそうですね。ですが、このまま平和なままだとは思えません」
シアはそう言う。紅蓮獅王の問題も魔人ベリアルの問題も解決をしていない。問題の原因を排除できていないのだ。このまま何も起こらないとは到底思えなかった。
そう考えていた矢先の出来事だった。
「た、大変です! 皆さん!」
受付嬢がそう言って慌てていた。
「どうしました? 受付嬢さん」
クラインが聞く。
「大変なんです! 王城に現れたんです。魔族のモンスターと、あの紅蓮獅団が!」
「なんですって!」
クラインは驚く。
「でもなんで王城に」
「どうやら王城には封印された魔王の魂が存在しているみたいなんです。だから、それを狙っているのかと。お願いします。皆さんの力でこの王国の危機を救ってください」
受付嬢はそう言った。
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