少年窃盗団の放課後⑩




駿平は白花が拘束されていた部屋へ到着した。 男を縛ろうか迷ったが、白花のいる手前、流石にそこまではできなかった。 経験上、先程の手応えからすれば、そう簡単には起きないと分かっている。


「運んでくれてありがとう。 さぁ、人がいるところへ戻ろう」

「ねぇ」

「うん?」


急に呼び止められドキッとする。


―――もしかして、さっきの話の続き?

―――どうしてここにいるのか、っていう質問か・・・?


ビクビクしながら質問を待つ。


「駿平くんは、どうしてそんなに強いの?」


聞かれたのは別のことだった。 確かに不思議に思うのは無理のないことだろう。


「習っていたんだ、こういうの」

「本当に? ただそれだけ?」

「あぁ、それだけさ。 さぁ、早く行こう」


彼女の手を取り歩き出す。


―――学校の自分と今の自分は少し違うから、気まずいんだよな・・・。


会場へ向かっていると突然正面から翔が現れた。


「スン!」

「ショウ!?」

「助けてくれ! 何故か追われているんだ!」


最低限の小声で話す。 確かに後ろからはスーツを着た男が追いかけてきている。


―――そう言われても、ここには武器が・・・。

―――そうだ!


「白花さん、相談したいことがあるんだ!」

「え?」

「ショウ! すぐに戻るから待ってて! ソイツらは敵だ、ここの人ではない! 攻撃してもいいから!」

「じゃあ誰だよ!? つか、三人相手は流石に無理だって!」


焦っている翔を無視し、白花と一緒にここから走り出す。 向かうは倉庫でここからはすぐ近くにある。


「白花さん、倉庫の武器になりそうなもの何でもいいから貸してくれない?」

「え? どうしてそんなこと・・・」


倉庫はプレートがなく、入らないと何があるのか分からないようになっていた。


「通った時、開いていたから見えたんだ。 さっき追われていたのは僕の友達、助けたいから」


そう言うと『じゃあ、木刀なら・・・』と言って貸す許可を出してくれた。 二本を持ち翔のもとへ戻る。 翔はまだ走っていたため木刀を一本投げた。 翔は二人、駿平は一人を相手に対峙する。

駿平の相手には見覚えがあり、一度鉢合わせた男だった。


「お嬢様を渡せ!」

「それは僕を倒してからだね」


白花には下がっててもらい戦闘を開始した。 戦っていると向こうがナイフを投げてきたため、それを打ち返す。 そして弾かれたナイフをマジックで消してみせた。 

もちろん種も仕掛けもある手品であるが、男を驚かせるには十分だった。 武器を失った男が取る手段は突進であると予想していて、男は予想通りに動いていた。


「ナイフはここさ」

「ッ!?」


刃物の輝きが人を止める効果は絶大だ。 男の前にチラつかせたナイフをすぐさま投げ捨て、重心を傾けた男を倒すのは左程難しいことではなかった。 トドメにと頭を殴り気絶させる。


「白花さん、無事?」

「うん」


見ると翔も無事倒したようだ。 だがヘロヘロとなりその場に座り込んでいる。


「ショウ! 大丈夫?」

「あぁ。 でもずっと走り回っていたから、流石にキツい・・・。 木刀があって助かった。 ・・・で、その子は誰?」


そう言って白花のことを見る。


「ここの娘さんだよ」

「へぇ・・・。 って、はぁ!?」


グイと胸倉を掴まれた。


「スン、正気か!? 俺たちの立場を分かってんのか!?」

「もちろん。 でも彼女のおかげで、木刀が借りられたんだよ」

「スンなら簡単に許可なく盗めるだろ・・・」


そう言うと呆れながら手を放した。 



そして数分前の話になるが、学人は既に屋敷外への脱出を成功させていた。 だがもちろん、集合場所へ行ってはみたが誰もいない。


―――まだ戻っていないのか。

―――俺よりもショウの方が早く空き部屋から出たはずなのに、どうしてだ?


心配になり再び屋敷へと戻る。 ざわついている中を歩き回っていると駿平と翔、そして白花を発見した。


「見つけた! というか、二人共どうしたんだよ、そのボロボロな服・・・。 それに君は・・・? 一体ここで何があったんだ?」


三人と横たわっている男たちを見て学人は首を傾げる。 事情を聞こうとしたのだが、背後から複数人の足音が聞こえてきた。 集団でいたためかすぐに見つかってしまったのだ。



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