少年窃盗団の放課後⑨
駿平は白花の質問を無視することも考えたが、これからのことを考えるとやはりそれは無理だった。
「えっと・・・」
―――どうしよう、なんて答えよう。
―――白花さんと鉢合わせるとか、思ってもいなかったよ・・・!
的確な答えを見つけられず、苦し紛れに逆に聞き返してみることにした。
「逆に白花さんは、どうしてあんなところにいたの?」
「え? あ、それは・・・。 その、知らない男の人たちが急に襲ってきて・・・」
「襲う!? そんなの大変じゃないか! 今すぐに人が多いところまで行こう。 白花さんが一人でいたら危ないよ!」
どうやら余程怖かったのか、それで先程の話を逸らすことができたようだ。 彼女の手を取り会場へ向かう途中、何とか誤魔化すことができたことにホッとしていた。
―――白花さんが襲われた・・・。
―――こんなことは、もちろん僕たちの計画にはなかったことだ。
―――これは会場にいる人に伝えるべき?
―――だけど僕自身このパーティーに招待されていないわけだし、危険が大きい。
―――『君はどこの子?』とか聞かれたら、もうどうしようもないよ。
―――同じクラスの白花さんの前では嘘をつけないからなぁ・・・。
すると間の悪いことに、先程倉庫へ行く前に出会ったスーツの男と遭遇した。 まだ頭は痛んでいるし、不覚を取ったことはやはり気にしている。
―――ッ、さっきの!
「あ、お前! もしかしてお前もお嬢様狙いか?」
―――狙いっていうのは、好意的な意味ではないよな。
―――ということは・・・?
「お嬢様を返せ!」
男が突進してきたのをサッとかわした。
「駿平くん・・・」
それを白花が不安そうに見ている。 周囲を見渡し武器になりそうなものを探すと、ランプがかかっている小さな台を発見したため、ランプを外し手に取った。
西園寺家では古風な装飾を好んでいるのかもしれない。
「白花さんは下がってて!」
先程は負けたが今度は武器を手にしている。 大人の男とはいえ、素手の相手に負けるわけにはいかなかった。
―――だけど、身のこなしからしてやはり普通の人ではないな。
何度か拳をかわし、反撃の隙を伺っていると大きな音が廊下に響いた。 それに男が僅かに反応したのを駿平は見逃さない。
「えいッ!」
攻撃が顎をかすめ男は大きな音を立て崩れ落ちた。 駿平は小柄なため相手の急所になる位置はしっかりと頭に叩き込んでいる。
「参ったな・・・。 白花さん、この人の仲間、あと何人いるのか分かる?」
「え? あ、ううん、分からない」
―――僕が見た顔はもう一人。
―――だから最低三人はいるはずだけど、それ以上いたら厄介だな・・・。
「ねぇ、その人はどうするの?」
「そうだね・・・。 人が廊下で倒れていたら目立つから、さっき白花さんが捕らえられていた部屋まで運ぼうか」
そう言って男を持ち上げるが、重くて運べなかった。
「格好悪いんだけど・・・。 白花さんごめん、手伝ってもらえないかな?」
駿平と白花が協力し男を移動させている頃、学人は空き部屋へと来ていた。
―――ネックレスがない。
―――ショウ、無事に盗めたな。
「西園寺夫人、西園寺夫人。 起きてください」
「ん・・・」
眠りは深かったが、かなり激しく揺すぶることでようやく起こすことができた。
「会場にいる皆様がお探しです。 戻られた方がいいかと」
「でも私、まだ佐々木さんとは会っていないわ」
「会場で直接お尋ねしてみたらどうですか? 戻っているかもしれませんし」
「そうね・・・」
眠たそうな身体を起こした瞬間夫人は自分の首元に手をやる。 当然ネックレスはないわけで、夫人が慌て始めてしまう。
「私のネックレスがないわ!」
―――ッ、マズい。
「本当だ! 一体どこで落としたんでしょう? いつ外したのか憶えていますか?」
「ここへ来るまでの間、頭が重くてあまり憶えていないの」
「僕はこの部屋を探しておきます。 西園寺夫人はここから会場までの通路を探しながら戻ってください」
「ありがとう。 今日は貴方に助けられてばかりね。 感謝するわ」
そう言うと夫人はここから去っていった。
―――・・・感謝されるとムズムズするんだよなぁ・・・。
適当にこの部屋を見渡したフリをする。
―――まぁ、ここにネックレスが落ちているわけがないんだけど。
―――もう少し経ったら、俺もこの部屋を出ようかな。
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