少年窃盗団の放課後⑧
駿平が戦闘をしている間に学人は翔と通信し“YES”と“NO”のやり取りで“空き部屋には寝ている夫人がいるだけでスンはいない”という情報を聞き出していた。
―――空き部屋にも辿り着いていないって、一体何をやっているんだ?
―――ショウもスンとは“一度もすれ違っていない”とか言うし・・・。
―――本当、スンは鈍臭い奴だなぁ。
学人は溜め息をついて翔に言う。
『ショウ、作戦変更だ。 ショウはそのまま空き部屋へ入り、直接ネックレスを盗れ。 そしたらそのまま外へ出ろ。 俺は夫人を起こしに今からそっちへ行く。
そしたら俺も外へ出るから、スンのことは後で考えよう』
そう言うと翔から“了解”という返事がきた。
―――スンのことも心配だけど、まずは仕事が優先だよな。
通信を終え会場の方を向くとある違和感に気付いた。 何故か皆の間が騒々しいのだ。
―――何かあったのか?
不審に思いしばらく様子を窺っていると、学人が見張っていたドアから出ていきそうな男性一人を発見した。 ここを通すわけにはいかないため慌てて引き留める。
「あ、あの! どこへ行くんですか?」
「あぁ、今から西園寺夫人を探しにね」
「夫人? もしかして、この騒ぎって・・・」
「そうだよ。 西園寺夫人の姿がしばらく見えないんだ」
「あ、僕、西園寺夫人の行き先を知っています! 今すぐに僕が呼んできますので、会場へ残って“夫人は無事だ”とお伝えください」
「本当かい? 助かるよ。 この屋敷の中はよく分からなくてね。 ありがとう」
そう言うと簡単に会釈し会場へと戻っていった。
―――急がないと。
学人も慌ててパーティ会場を後にした。
一方その頃、翔は目的の空き部屋への潜入を成功させていた。
―――これだよこれ!
―――このスリル、堪らないねぇ。
夫人は椅子に座り大きなテーブルに顔を伏せて寝ている。 睡眠薬で眠っているのだから簡単には起きないだろうが、念のため静かに行動しなければならない。
後ろからネックレスをそっと抜き盗ると音を立てないよう懐へしまった。
―――よし、あとは出るだけだ。
―――・・・って、どうして二階のど真ん中に夫人を寄越したんだろうなぁ。
―――廊下は長いし、気付かれないように歩くのは結構神経を使うんだぞ。
不満を漏らしながら廊下へ出る。 音を立てないよう歩いていると、角を曲がったところで三人の男と遭遇した。 スーツを着込みSPのような雰囲気を出していて、会場にいる人間とは異質の存在だ。
―――ッ!?
―――足音には気付くようずっと耳を澄ませていたけど、物音は一切聞こえなかったぞ。
―――普通の人は少しの足音でも聞こえるはずなのに、どうしてだ?
―――というよりマズい、顔を見られた・・・ッ!
仮面舞踏会ではないため当然顔を隠してはいない。 だが翔は盗んだものを直接運ぶ役目のため、仲間三人の中で一番顔を見られてはいけない存在だった。 これは学人に散々注意されていたことだ。
―――ガク、ごめん・・・!
何事もなかったように平然と男たちの横を通り過ぎようとしたが、やはりそう上手くはいかなかった。
「やれ」
「ッ!」
その瞬間に拳が飛んでくる。 集中し警戒は怠っていなかったため避けることはできた。 だが大の男三人をどうにかすることなんてできはしない。
―――マズい!
危険な状態と察し走り出した。 後ろからは男たちが追いかけてきている。
―――問答無用かよ!?
―――俺が本物の客じゃないって、バレてんのか!?
―――そうじゃなかったら、客であるはずの俺に何かしてくるわけないもんな。
相手が誰なのか分からないため下手に抵抗はできない。 なるべく事を荒立てないことが鉄則だ。
といっても向こうから襲いかかってくることからしてもう手遅れな気もするが、自分としてはまだ下手を打ったつもりはない。
―――スンが何かしたのか・・・?
―――コイツらを撒くまで外へ出れねぇじゃん!
一階には会場があるため二階と三階をぐるぐると回ることにした。 逃げてばかりではどうしようもないので、何とかしたいがやはり三人相手は厳しい。
不意を突けばとも思うが、武器を持っていない今、相手の手の内も分からないため行動に移すことができなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます