少年窃盗団の放課後⑦




駿平が目覚めると、そこは知らない真っ暗な部屋だった。 当然、そのような計画はないため予定外の出来事だ。


「うッ・・・。 頭、殴られたんだっけ・・・」


痛む頭を押さえながら、気を失う前のことを思い出す。 背後からだったが、確かに固い鈍器のようなもので殴られる音を聞いた。 コブはできているが血は出ていない。 

とりあえずこのまま動くことができそうだ。


「そうだ、こうしちゃいられない!」


―――気を失ってからどのくらい経ったのかは分からないけど、ショウはもう待機しているはずだ。

―――早く行かないと。


立とうとするが上手く立ち上がれない。 見ると両手が後ろで縛られていた。


―――そんな!

―――どこかに切るものは・・・。


足は縛られていないため自由に動くことができた。 部屋に何かないか探したが見つからず、代わりに見つけたのは棚の中の皿だった。


―――皿か・・・。

―――これを割りさえすれば・・・。


カーテンを外しその上で皿を割った。 音が出ないようにするためだ。 割れた破片で縄を切ると、こっそり部屋から出る。 鍵もカーテンレールをバラして使えば、簡単に開けることのできる作りだった。


―――ここはどこだ・・・?


片眼鏡のスイッチをONにし、簡易なマップとして活用する。


―――三階か。

―――倉庫は近いけど、取りに戻っている時間はなさそうだな。

―――このまま二階の空き部屋まで行って・・・。


「ん?」


歩き出そうとするとふと隣の部屋から話し声が聞こえ、慌てて息を潜め聞き耳を立てた。


「んーッ!」

「大人しくしろ! バレたらタダでは済まないからな!」


聞くからに若い少女と、大人の男の声だ。


―――もしかしてピンチ?

―――僕みたいに誰か攫われた?


これも予定にはないことだったが、少女が困っているのを見過ごすことはできなかった。 というのも、何となくある予感があったのだ。 思い切って隣の部屋へ突入し、二人の姿を確認した。


「ッ、だ、誰だお前!」


振り向いた男の後ろに予想通り白花が捕らえられている。  椅子に座り口はテープで固定され、両手両足は縛られていた。


「何をしているんだ! 人を攫うなんて犯罪だぞ!」


―――って、僕が言える立場じゃないけど・・・。


「見られたからには、お前はもう生かしておくことはできない」


そう言ってスーツ姿の男は鞘を取り出した。 それにつられ駿平も構える。


―――・・・って!

―――さっき盗んだ鞘、どうしてお前が持っているんだよ!

―――それは僕のものなのに・・・!

―――というより、気を失う前に遭遇したスーツ男の二人と同じ仲間だよな。


近くを見渡し武器になりそうなものを探す。 古ぼけたロウソク台を手に取ると戦闘が始まった。 素手では弱いが何か武器があれば駿平は負けない。 

相手の方が身体は大きいが、場所の狭さと男が音を立てないようしていることが功を奏した。 鞘が肩を掠めた程度の傷だけで、相手を打ち倒したのだ。


「白花さん、大丈夫? 怪我は? ここは危ないからすぐに出よう。 この男もいつ起きるのか分からない」


彼女のテープを剥がし縄も解いて立たせてあげた。 ただ計画外のことに駿平もなるべく早く別れたかったのだが、白花が駿平の腕を掴んでいた。


「待って! 助けてくれてありがとう。 ・・・駿平くん、だよね?」

「・・・」

「どうして駿平くんがここにいるの? 駿平くんの苗字は、パーティの出席リストになかったと思うんだけど・・・」

「ッ・・・!」


―――しまった、西園寺さんの家族にそう問われた時の答え、考えていなかった・・・!


駿平は怯えながらも真剣な表情の白花に困り果てていた。



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