少年窃盗団の放課後⑥
その頃パーティ会場に侵入した学人は、様子を伺いながらその時を静かに待っていた。
―――そろそろかな・・・。
―――スンが倉庫から武器を入手する頃だ。
時間を見計らい学人は壁に向かって翔に声をかける。
『ショウ、移動していいよ。 空き部屋の前でスンからネックレスを受け取ってくれ。 俺は今から夫人を誘導する』
翔から“了解”の合図が届くと、通信を切り早速夫人の姿を探す。
―――・・・いた!
―――だけど、人が多くて割り込みにくいな。
しばらく様子を見て夫人の相手がいなくなったところで、早速とばかりに駆け寄った。
「西園寺夫人。 お疲れ様です」
「あら、先程のお坊ちゃんね。 どうしたの?」
「紫色のスーツを着た方が、二階の空き部屋へ向かうよう西園寺夫人にお伝えしてほしいと言われまして」
「紫色のスーツ・・・。 佐々木さんのことかしら?」
紫色のスーツを着た男がいることは確認済み。 首を傾げる夫人が名前を出したため、それに乗っかることにした。
「どうやら急ぎみたいです。 僕に伝言を託すと、すぐに行ってしまいました」
「そう、ありがとう。 早速行ってみるわね」
「あ、そのグラス、よければ僕が預かっておきます」
「助かるわ」
グラスを学人に渡すと夫人は会場から去っていく。 先程夫人と接触しての子供なため、すんなり信用させることができた。
―――意外と上手くいったな。
睡眠薬の痕跡を綺麗に拭い、グラスを元の場所へ戻した。 夫人の足取りを見るにまだ効果は表れていないが、それも時間の問題だ。
―――よし。
―――あとは二人共、頼んだぞ。
夫人が出ていったドアの前で待機する。 会場を抜けた夫人の後を追わせないためだ。 誰かに夫人の行方を聞かれたら適当にあしらわないといけない。
だがしばらく待っていると翔から“作戦失敗”の合図が届く。
―――はぁ?
―――作戦失敗!?
―――何か問題でもあったのか?
問題を起こすと言えば駿平だろう。 慌てて駿平に連絡を取ろうと試みた。
『おいスン、聞こえるか? 夫人はもう行ったぞ』
そう伝えてから数十秒後、翔に連絡をした。
『ショウ、スンには会ったか?』
すると“NO”という返事。
―――会っていないだと!?
―――夫人はもう空き部屋に到着して、今頃ぐっすり眠っているはずだ。
―――だから計画通りに行けば、スンは既に夫人と会っているはずなのに・・・!
『スン、もしピンチならショウが近くにいるから助けを呼べ!』
そう伝え焦る心を落ち着かせ数分待ち、もう一度翔に連絡をした。
『ショウ、スンには会ったか?』
それにも“NO”という返事だけだ。
―――はぁ!?
―――まだ二人は会っていないのか!
『ショウはもう、待機できているんだよな?』
“YES”
―――・・・一体何をしているんだ、スンは。
―――もうショウは待機できているんだぞ。
―――やっぱり問題はアイツなんだよなぁ・・・。
非常事態であるし、駿平から何の連絡手段もないため不安と焦りが急速に高まっていった。
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