少年窃盗団の放課後⑤




一方学人の指示を聞いた駿平は緊張を落ち着かせていたところだ。


「スン、頑張れよ。 ヘマはすんな!」

「分かってるよ・・・」


翔に送り出され、重い足を動かして倉庫に一番近い窓から侵入した。 簡単な見取り図は既に頭の中に叩き込んであり、特に迷うこともない。


―――といっても、倉庫はこの真上。

―――三階にあるんだよね・・・。


ただいくら普通より身体能力が高いといっても、忍者のように動けるわけもない。 人の気配を慎重に探りながら歩いていると、予期せずスーツを着た男性二人がやってきた。 

明らかに招待客に見合わない身体の作りに思わず身構える。 


―――ッ、マズい、ここの人か?

―――黒いスーツで頑丈な体つき・・・。

―――もしかしたらSPなのかもしれない。

―――大丈夫、僕は堂々としていればいい。

―――もし誰かと問われれば、偽の招待状を見せれば大丈夫だろう。


男性二人は小声で何かを話しながら歩いてくる。 それを素知らぬ風を装い通りすがろうとした瞬間、すれ違い様に強烈な衝撃が身体を襲った。


「うッ・・・」


猛烈に腹部が痛む。 いきなりのことに何が何だか分からないが、どうやら男に殴られたらしい。


「顔を見られた。 ここで始末をしよう」


小声でそう言うのが聞こえ、マズいと思った。 明らかに様子がおかしい。


―――見られてはいけないことでもあるのか?

―――もしかして、ここの人じゃない、とか・・・?

―――とにかく逃げないと!


現在は何も武器を持っていないため駿平は弱い。 更に屈強な男ともなれば勝率はほぼゼロに近いだろう。 逃げるしか選択肢はなかった。


―――・・・追いかけてはくるけど、足音を出さないな。

―――パーティがあるから気を遣っているのか?

―――でも、そんな雰囲気ではなさそうな・・・。


腹を抱えながら二階へ移動し、死角に隠れた。 男たちの追う動きはかなり遅い。


―――護身用に適当に武器をゲットしたいけど、攻撃はできない。

―――もしここの人たちだったら、絶対に騒ぎになる・・・。


駿平は中に着ているワイシャツのボタンを一つ千切った。 ボタンを廊下の逆方向に向かって投げる。 遅れてやってきた男たちは、その音を聞いて走っていった。


―――危なかった・・・。

―――時間を取ってしまったな。

―――もうショウは動き出しているのかもしれない、早く行こう。


ボタンを回収すると倉庫へと急いだ。 だが走ってはならない。 いつ誰に自分の姿を見られるのか分からないからだ。 廊下を不用意に走っていると疑われてしまう。


―――ここか・・・。


もう一度レンズ越しでも倉庫の位置を確認すると、ドアノブに手をかけた。 当然のように鍵がかかっている。


―――まぁ、そりゃそうだよな・・・。


周りに金属系を持っている人がいないかをレンズ越しで確認した。 足音も聞こえず警備はどうやらいないらしい。 


―――とっととやってしまうか。


ただ室内の倉庫程度の作りなため、鍵は非常に簡易的な作りだ。 懐から針金とピッキングツールを取り出し、鍵穴の中突っ込むと物の数秒で開く。


―――うわ、多いな・・・。


宝物庫、ではないがそれなりに値の張りそうなものが置かれている。 模造刀のようなものから、ケースには本物と思しき武器も見えた。 

だが埃が積もっているところから見ても、あまり大切に扱われていないのかもしれない。


―――何を借りよう?

―――小さいものでいいんだよな。

―――寧ろ、刀の鞘だけで十分だ。


そう思い、鞘に手を伸ばそうとしたその時だった。


「ッ――――」


頭に強い衝撃を受け、駿平はその場に崩れ落ちそのまま意識を失ってしまった。



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