Epi70 市内観光は班行動です
船上は寒かった。
風が出てくると寒いしスカート捲れそうだし、挙句、男子がついに禁断の魔の手を出してくるし。まさか本当にスカート捲りするなんて。昨日散々弄んで、まだ足りないのかな。男子はケモノすぎる。
「災難だね」
「女子にやったら大変だけど、そこは男と認識して好き勝手だ」
「でも、照れ方が女の子みたいで、あれだと男子も喜んじゃうよ」
「だよねー。あ、いや、やめて。とか、もう女子だもん」
どうやら俺のリアクションは男子を喜ばせるらしい。スカートを捲られた経験者から見ると、俺のパターンが一番駄目なんだとか。調子に乗るからだって。
洞爺湖クルーズが済むと今夜の宿泊先、札幌まで移動することに。
およそ特急で二時間。今日だけでかなり移動したことになる。やっぱ新幹線を通した方がアクセス良さそう。
電車に乗るまでの間ホームは生徒でごった返すし、騒々しくて先生の声も聞こえない。駅員から拡声器借りて整列乗車と、大人しくするように指示してるし。
ホームに電車が入線すると次々生徒が吸い込まれて行く。
先生も大変だ。ひとりでも乗り遅れたり置いてっちゃうと責任問題だし。
各自座席に着くとまた明穂と長山さんで、ボックスにして明穂と並んで座る。
「今日泊まるのって」
「ホテルだね。時計台の近くみたい」
「じゃあ、明日は真っ先に時計台だね」
「その後は大通公園かな」
お土産の物色もするとか言ってるし。札幌の中心街だから、何でも揃ってるのは確かだろう。北海道庁の赤れんが庁舎も見るんだとか。今から計画して効率よく回りたいらしい。
「あ、そうだ。大貴は今夜こそ一緒に寝るんだよ」
「無理だってば」
「大丈夫だって。ちゃんと偽装工作するし、男子とは口裏合わせておくから」
こうなると聞かない。
「するの? 部屋で?」
「その時の気分かなあ」
「無いから」
「なんで?」
他の女子が居る部屋でできるわけ無いし。長山さんもいちいち聞かなくても。
「他の人がするのって、少しだけ興味あったりするんだけど」
「見世物じゃ無いし」
「でも、学校で見せ付けてるでしょ? キスとか抱擁とか」
「興味あるなら見せてもいいよ」
じゃないでしょ! 明穂はなんでこんなに明け透けなのか。
見られるのは明穂だけじゃなくて、俺のもなんだって、わかってそうだけど。
車内ではこんな話が少し続いたけど、二時間の乗車時間で結局全員寝てた。
札幌に到着した頃には日も暮れてすっかり暗い。
ホテルまで隊列組んで大名行列状態。一学年全部だからかなりの数だし。
ホテルに入るのも順番で少しずつ。全員収容するまでに三十分は掛かった。
で、俺はやっぱり例のガチゲイのグループに。
「今日こそ」
「無いから」
「先っぽだけでも」
「無いから」
怖い。
これはあれだ、緊急避難ってことで明穂と一緒も已む無し。絶対襲われる。後ろの処女は守り通す。
「じゃあ、大貴はこっち」
「達者でなー」
「残念無念。今日こそはと思ったのに」
「明日があるじゃないか」
まだあと一日残ってた。守り切れるか不安になるけど、明穂がなんとかすると思う。
明穂と長山さんに引き摺られて、部屋に連れ込まれた。
六人部屋でちょうど六人。他の女子は俺が一緒でいいのだろうか。
「気にしないって」
「三菅さんとセットでしょ。悪さしないと思うから」
「そこは三菅さんを信用してる」
「だって三菅さん居るのに、あたしたちに手を出すの? 無理だよね」
すべては明穂の信用の高さだった。不埒な真似を明穂が居る状態でする訳が無い。もちろん俺だってそんな気はないし。
気にしないと言ったのは長山さん。なんか勘違いだと思うけど、俺のこと気に入ったのかな。胸とか押し付けて来たし。普通は嫌がると思う。
夕食はだだっ広い宴会場。最大五百人収容可能ってことで、結構余裕のある配置になってた。出て来たのは北海道らしい、魚介類がふんだんに使われたものだった。
夕食後、このホテルには大浴場が無いから、各室にあるユニットバスに入るんだけど、やっぱり明穂が一緒にって雪崩れ込んで蹂躙されることに。
「昨日は無理だったけど、今日は頑張るんだよ」
「外に聞こえるってば」
「いい。そんなの気にしない」
「駄目だってば」
抵抗虚しく食われました。
お陰で他の女子と一緒に居ても賢者で居られたのは幸いなのか。だって、部屋でバタバタしててパジャマが捲れ上がって、長山さんだけなぜかブラが丸出し。俺が居ても堂々としてて、もし明穂に食われてなかったらヤバかった。
「ちょっとサービスし過ぎたかも」
「モロ出しじゃないからセーフ」
なんか、長山さんのブラって明穂以上に巨大だった。あの中身ってどうなってるんだろ。
「大貴。興味あるんだ」
「えっと、いやあの」
「そうか、あたしじゃ満足しないんだ」
「違うってば」
追及されあっさりゲロさせられて、明穂に股間を鷲掴みされて、面白がる女子連中だし。「形が」とか「出しちゃえ」とか「起った?」とか、みんな面白がっててもう勘弁して。
こうして大騒ぎしてたけど、先生が見回りに来ると白々しいくらいに、静かにして誤魔化してやり過ごしたみたい。
「大貴は巨大なのを見て満足してる」
「別にそう言うことじゃ無いし」
「帰ったら三日間やり通すから」
「無茶です」
明穂と一緒のベッドで並んで寝てると、やっぱり手がヤバい位置に来るし。
弄ばれて朝を迎えました。
「今日は札幌観光だよ」
元気だ。
俺は遊ばれ過ぎて疲れ切ってるんだけどね。
ガチゲイの居る部屋に行き明穂のウィッグを回収。そのあと朝食を済ませて各班ごとに市内観光に。因みにウィッグは今俺の頭に載ってる。
明穂の班と長山さんの班で一緒に回ることになった。その中に男子は俺一人。と言っても、相変わらず女装させられているせいで、全員女子にしか見えない。
「普通の格好したい」
「記念写真撮る時だけは特別に許可する」
男子にはなれそうにありません。
傍から見れば仲良し九人のグループにしか見えないんだろうな。まさか男子が混じってるとは思いもよらないだろう。だがしかし、男が一人。さあどうだ、見分けなど付くまい……。じゃなくて、なんでずっと女装なの?
明穂が居て俺が居ることで目立つらしいこのグループ。男子連中が少し距離を取りながら一緒に移動してるし。
「男子が鬱陶しいね」
「誰が目当てかなんて丸わかりだけど」
「浅尾と明穂でしょ」
「だよねー。悔しいけど浅尾って下手な女子より可愛いし」
ホテルを出て少し歩くと時計台に着いて、みんなで写真撮るんだけど、群れて張り付く男子連中にシャッター切らせてた。頼まれると喜ぶけど、付いて来ても雑用係にされるだけなのに。
時計台の中に入るんだけど、高校生は無料ってことで学生証を見せて、一階展示室から順に見て行く。
展示室内はうちの学校の生徒でごった返してるし、先生も数人居て女性教師一人が話し掛けてくる。
「浅尾君、だよね?」
「そうです」
「その格好、ずっと?」
「そうです」
趣味なのか、とか聞かれたけど速攻で否定した。
俺をまじまじと見つめて「あまりにも可愛らしいから、男子からモテモテでしょ」とか言ってるし。お釜掘られそうになったけど、なんとか逃れてる。
「なんか男子にしておくのがもったいないって言うか」
「ですよね! 先生もそう思いますよね」
「浅尾って、ちょっと可愛すぎるし」
「男子やめて女子になればいいのにって思うんです」
やめて。
みんなして同意してもならないから。
「ところで、まさかとは思うけど。浅尾君、女子と一緒の部屋に居たりしないでしょうね?」
ひょっとしてバレてるんじゃ?
内心びくびくの俺に対して女子連中は「いくら見た目が女子でも一緒は無いですよー」とか言ってる。でも、俺の目を見て耳打ちしてきた。
「あんまり煩いことは言いたくないから、黙っててあげるけど、如何わしい行為は禁止だから」
バレてるし釘刺された。
でも、それは明穂に言って欲しい。
先生が離れると「大貴顔に出すぎ」と明穂に突っ込まれ、他の女子も「狼狽え方が半端じゃ無いんだもん」「目が泳いでるからすぐバレちゃう」なんて言われて。
でも、俺の度胸の無さは折り紙付きなんです、とは言い難い。
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