論理の魂

 言いたいことがなくなれば、口を閉じるのは当然のことだ。さもなくば口が乾いてしまう。しかし鳴くことが仕事となれば、それも許されるのかもしれない。


「弦をはじく雨つゆに、活版刷りの物語を語る、彼は作家の英雄、神にもっとも近づいた人」


 ある女が街のそよ風に、そんな調を浮かべた。


 街角で歌えど、立ち止まる者はない。もはやウタは時代遅れだ。人々は彼女を流れに逆行した狂人と評価し目を背けた。


 しかしそれは歴史あるウタだった。かつては誰もが魂を震わせたのに、もはや空気を震わせる現象でしかない。


 もちろん私も目を背ける者だ。だが、彼女たちのことをうらやましくなることがある。まるで餌を欲する魚のように、パクパクしていいのだ。私はウタを語る者だからという理由で、ナンセンスに身を投じていいのだ。


 彼、彼女を誰もが避けるが、排除しないのはこのためである。


 無意味に無意味という意味が宿っているのだ。


 だとしても、その者たちが自分の能力の限界を感じながら、どこかで才能があると勘違いしているのは痛々しい。


 もう出し尽くされたのだ。その能力は才能と言えるほど特殊な意味を持たない。だから私たちは目を背けるのだ。あいつらは諦めが悪い、と。

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