陰キャの王

 教室は陰と陽に分かれている。しかし陰や陽にもカーストがある。その両者の頂点、陰キャof陰キャと陽キャof陽キャだけが、その階級の外側にいる。


 朝のグラウンド、時間は体育の授業、私はギリ走ると言える感じの速度で走っていた。


 まわりの多くは、私がとんでもない鈍足だと思っている。競争となったとき、体育会系は懐疑心に叫ぶこともあるが、私は揺るがない。


 これが私の能力だ。学校では一生懸命走っているフリをすれば許される。ただ学さえよければ、多くの面で真面目にふるまえば、問題ない。


 それも学年主任がたいていは体育教師だからだ。私が優等生で、学においてはキチガイと呼ばれるほど真剣なのを知っている。


 だが同級生には通じない。むしろ教師たちが、私の存在に目をつむることに対し、強烈な怒りをもって接する。


 体育会系の男子の多くは、私に聞こえるように悪口を言い、私はそれに無表情か、時に笑って応える。こちとら武の経験がないわけでもない。体も草刈りで鉈や両手鎌をふるい、ほどほどに鍛えている。だが彼らは挑まない。


 秩序を盾にする臆病で陰湿な奴らだ。学校社会は彼らを陽キャと呼んだ。


 そして私は、日陰者も近づかない、陰キャの王であった。

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