星の憂鬱

 国民が一人死ぬと、ここでは祭りが開かれる。多くの者が集まって、女王の下に横たう肢体を、祝うように微笑み見つめる。ただひとり水晶の涙を落とすのは君主だけ。昼夜を分けた者の片割れ、永遠の朝を司る太陽だった。


「あるべき場所にかえりなさい。私たちもいつか戻ります」


 白き腕に抱かれて、力を失った体は輝きだす。地に着く身は空に憧れ、青空に溶けながら昇って行った。彼は星になったのだ。


 幼子は手を伸ばし、輝きを掴もうとした。青年は目を伏せ無理に笑った。中年は死後の幸せを祈り、心から微笑み見送った。そして女王は嗚咽していた。


 世が月と太陽の国に分かれて、民は星になるようになった。でも、死ぬだけではいけない。地上では体が固まり半透明になって膨らんでいく。最後は鋏や尾をもつ石の化物として、月の国をさまようことになる。


 女王とその弟の手だけが、空に民をおくることができる。


 だが姉弟は後悔していた。ひとつの世に昼夜があった時代、民は異形にならず、自ら星になれた。両国の民が、隣国に憧れて行き倒れすることもなかった。だから月と太陽は民たちに笑顔を植え付けて、皆の分の悲しみも背負ったが変わらない。


 創造主たちは英雄を求めている。

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