ヘビーノスタルジア
道端で弱った蛇を拾った。ウロコはところどころ剥がれ、動きは鈍く、しかし胴は僕の手首ほどもある。老いた蛇だ。カラスかネコにやられたのだろう。
それにしても、野の獣とはもっと独特の臭気があるものではないか。子蛇を拾った友人は、蛇も生臭いと言っていた。だが、こいつはいつも線香と畳のにおいがする。
おばあちゃんのかおりだ。
蛇に顔をうずめるだけで、幼き夏がよみがえる。
蛇がチロチロ舐める生肉すら懐かしい。あの日、あの家で食べた馬刺しを思い出す。思えば、祖父母の家では毎食生の肉、魚や卵が出ていた。衛生的にまずいとは思いつつも、この鶏肉がおいしそうに見えてくる。
蛇は私の指を鼻で突き返して、肉を食わなかった。それで余計にこの肉を自分で始末したくなった。
明日は休みだ。それに美食には犠牲も欠かせないと聞いたことがある。僕はショウガ醤油をつけて、蛇の食べ残しを口に放り込んだ。
その瞬間、目の前が真っ暗になった。
目が覚めると僕は床にいた。目の前では巨大化した老蛇が、興味深げにこちらを見つめている。
「ユウスケ、久しぶりねえ。やっぱり血は争えないってことかしら」
僕の名を呼ぶその声は、あの頃と変わらないやさしいものだった。
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