消費の街
少女と男が十字架にはりつけになっている。足元には油のしみた、黒光りする薪が群れなす。
二人を見つめる目は幾千と、どれも両下がりの三日月形で、ざわつきは粘ついた喜びに空気を染める。しかし二人を見る目で、ただ二つだけ悲しみをたたえたものがあった。
その女はスーツにシャツやネクタイも黒だった。顔にも漆黒の目だけが出る仮面をかぶり、悲しみを二つの穴から外にこぼす。
彼女は街で唯一の聖職者だった。神を殺した人々の信じるものは、快楽の発散のみ。姦淫も殺人も富も何もかもが街のシステムで処理される。この魔女狩りの模倣は処理作業のひとつだ。人々の嗜虐心を散らすため、聖職者が心を背負い、犠牲者は痛みを背負う。
ついに処刑が始まった。鞭打ち、トーチで皮膚を焼き、薪に火をつけるふりをして、スケープゴートの親子を鳴かせる。その悲鳴に観客の恍惚が混じる。聖職者の嗚咽も混じる。
聖職者は次の犠牲者だ。彼女がその目に見るのは、未来の自分なのだ。
それでも慈悲はない。誰もがこうし、ああなる可能性がある。
しかし真に恐れる必要はない。死んでもその住人は消えない。死者の名がジョンなら、政府から生者のジョンが送られてくる。
それがこの街だ。
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