シリコンノイローゼ

 僕は全人類を愛すことができない。シリコンノイローゼのせいだ。


 大学に入学し「卒業」したくて、興味本位で行ってイったのをきっかけに風俗にハマり、店々を巡っていた。だがそこで気付いた。


 僕はヒトの内なるシリコンに発狂してしまう。


 知らずとも胸に、鼻に、顎にそれが入っていると呼吸があらくなる。憤死寸前に追い込まれる。発射寸前に追い込まれるのは好きだが、止まらない心臓と凶暴な恐怖を味わうのは勘弁だ。お店にも店員さんにも迷惑かける。


 だが性欲の処理だけなら問題にならない。右手は恋人、左手が愛人だ。問題は好きになる人がいつもシリコン入りなのだ。


 こんな体だから心ではどこまでも愛せる。でもヒト科ヒト属の生物だから、心だけでは愛が崩れる日も来てしまう。


 プラトニックラブはどれほど難しいのか。見た目だけじゃないというけど、肉体と心の片方だけでは浅くなる。


 だからといって僕の恋愛は、愛を深めようと姿をしかと捉えただけで、じわじわ狂気がわいてくる。


 美しさのためにする努力を否定したくはない。だから今日もこうして、歯を食いしばり手をつないでいるが、僕はまた拒絶するのだろう。


 シリコンの呪いだぜ、もといシリコンノイローゼである。

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