夏雪掌編集――かせつトイレ――

狐藤夏雪

アニムス・エクス・マキナ

 晴天に声高々と歌は響く。街を凱旋するのは有機の棺。勇気を忘れた愚者や道化のパレードだった。


「曇天からころ崩れれば、からっと乾いたダイヤの快晴! 」


 口々に叫ぶのは、このような言葉である。


 それをシリコン仕掛けのシビリアンたちは、笑い馬鹿にし胸を張る。歌に合った拍手は賞賛のものではない。歓喜に生ずる興奮に打つ「本能」だった。


 かつて愚者たちは車で足を延ばし、インターネットで脳神経を世界に張り巡らせた。しかし、それにより肉は麻痺することとなった。そしてついに魂までも延長し麻痺してしまったのだ。


 今や歩くのは車で、情報が巡るのはインターネットだけで、理性も感性もごった煮にするのはヒト型機械だ。


 今や愛玩されるのはヒトで、絞られ屠られ市場を巡るのはヒトで、ごった煮を食うばかりなのはヒトだ。


 曇天は崩れた。からっと乾いた輝ける時代となった。


 ひとり神へと賞賛の拍手をおくる私は、唯一軽蔑の声をあげない。過去を想い、我々の世が来た興奮に、人間だった者たちが担ぐミコシの上でこう叫ぶ。


「同胞たちよ、私のもとで生きるのだ! 愚者も私でこの身も私、心身分離の時代を謳歌しようではないか! 」


そしてシリコンの歓声は街を埋め尽くす。

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