第8話

 1周し終わると、いよいよ中の探検です。待ち合わせの時間を決め、僕達は中に入りました。Tと僕は、まずブリッジへと入っていきました。1階はいくつかのホールと船室になっていて、2階もほとんど船室、3階が操舵室になっていました。水中ライトの光に照らされて、暗がりの中から次々と、荒れ果てた光景が浮かび上がってきます。家具、調度の類は早くに朽ちてしまうのでしょうか、がらんとした部屋の中は、泳ぐにつれてただ細かい塵が舞うばかりで、錆び付いて動かなくなった舵輪や、床に落ちたまま朽ち果てたシャンデリアの残骸などは、なんともわびしげでした。

 僕には、目の前に見えているのは、ロマンあふれる廃墟などではなく、理不尽に殺された哀れな生き物のように思えてきました。そして、最初の胸踊る気持ちは、いつのまにか消え失せてしまい、なんともやりきれない悲しさで胸がいっぱいになってきました。

 この船は、どんな一生を送ってきたのだろう。この船の全盛期はどんなだったのだろう。今はこんなに朽ち果ててしまっているけれど、きっと華やかな時代があったはずだ。それなのに、なんでこんなところに沈まなければならなかったのだろうか。でも、荒れ果てた船室は、何も語ってはくれませんでした。

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