第8話
1周し終わると、いよいよ中の探検です。待ち合わせの時間を決め、僕達は中に入りました。Tと僕は、まずブリッジへと入っていきました。1階はいくつかのホールと船室になっていて、2階もほとんど船室、3階が操舵室になっていました。水中ライトの光に照らされて、暗がりの中から次々と、荒れ果てた光景が浮かび上がってきます。家具、調度の類は早くに朽ちてしまうのでしょうか、がらんとした部屋の中は、泳ぐにつれてただ細かい塵が舞うばかりで、錆び付いて動かなくなった舵輪や、床に落ちたまま朽ち果てたシャンデリアの残骸などは、なんともわびしげでした。
僕には、目の前に見えているのは、ロマンあふれる廃墟などではなく、理不尽に殺された哀れな生き物のように思えてきました。そして、最初の胸踊る気持ちは、いつのまにか消え失せてしまい、なんともやりきれない悲しさで胸がいっぱいになってきました。
この船は、どんな一生を送ってきたのだろう。この船の全盛期はどんなだったのだろう。今はこんなに朽ち果ててしまっているけれど、きっと華やかな時代があったはずだ。それなのに、なんでこんなところに沈まなければならなかったのだろうか。でも、荒れ果てた船室は、何も語ってはくれませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます