第6話

 翌日の朝、いよいよ出航です。夢にまで見た、沈没船と出会えるのです。空は晴れ渡り、波も穏やかで、絶好のダイビング日和でした。

 港からモーターボートで3時間余り、とうとう目指すダイビングポイントに着きました。ボート上でミーティングをすませ、いよいよ潜水です。初めての沈没船に胸をどきどきさせながら、海へ飛び込みました。

 水面から見おろすと、透明な光のきらめきが淡いブルーのベールに変わり、さらに濃い藍色の薄闇に変わるあたりに、その船は静かに横たわっていました。水深は甲板で約四十メートル、潜るにはちょっとつらいあたりです。

 それにしても、思ったほど大きな船ではありません。せいぜい、ちょっとした客船といったところでしょうか。意外なことに船体はあまり傷んではいないようで、水面から見た限りでは、不思議なほど原形を保っているように見えました。

 ただ、どう見てもそれほど昔のものではありません。せいぜい第二次大戦頃の船のようでした。なんとなく前世紀の帆船を想像していたので、ちょっと拍子抜けしました。

 でも沈没船は沈没船、ましてこれまでほとんど人目に触れていない船ですから、いやでも冒険心をかきたてられます。僕にはとても魅力的に見えました。気を落ち着けて見回すと、みんなも同じ気持ちでいるようで、はやる心を押さえつけるかのように、Tの方を見ています。

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