第4話

 僕らのグループは、リーダーのIを含め男性ばかりの4人組です。Iはダイバー歴十年を越えるベテランで、仕事もスキューバダイビングのインストラクター、その道ではちょっとは知られていて、海外のガイドとも親交があります。ほかのメンバーであるSもYも、Iとまではいきませんが、かなり年季を積んでいます。一番経験の浅い僕は、口の悪い仲間たちに素人扱いされて、しょっちゅうふくれっつらをしています。

 僕達は、年に1回は合宿と称して、全員で遠征をすることにしています。あの日もみんなで場所の相談をすることになっていました。場所の設定については、毎回けっこうもめます。メンバーが4人いれば、行きたいところもいろいろです。

それを全員のレベルやなにかを考えて、あれこれ調整するのがIの役目です。

ところが、Iはあの日みんなが口を開く前に、ニヤニヤしながらこう言ったのです。

「みんな、外国の海に潜ってみる気はないかい。」

びっくりしている僕達に、Iはこんな話をしてくれました。

 Iと友達のある国のガイドから、手紙がきたというのです。それには、最近見つかった沈没船のことが書いてありました。なんでも、その人が偶然見つけたばかりで、まだ荒されていないから、ぜひ潜りに来い。こんなチャンスは滅多にない、ということだったそうです。

 Iはさっそくメールで詳しい話を聞きました。それによると、割合有名な島だが、通常のダイビングポイントからは外れていて、そのTというガイドしか場所を知っているものはいない。ちょっと深いがほかの条件は最高で、このメンバーのレベルなら大丈夫だろうということでした。

 僕達は、一も二もなく賛成しました。

 そこから先は、おきまりの日程調整やら手続きやらで、結局僕達が飛行機に乗り込んだのは、それから一ヶ月も後のことでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る