第四章 2

「Ruri・・・。あなたは、自分の病気のことも隠してた上に、こんな大事なことを一人で決めるなんて・・・。私は、母としてマネージャーとしてそんなに頼りない?」


「そうじゃないの。昨晩も話したけど苦労をかけっぱなしのお母さんにこれ以上心配かけたくなかったの。分かってくれたじゃない。」


「昨晩は治療の話は聞いてなかったわ。…まあ、あなたももう大人なんだから、私がとやかく言うことじゃないかもしれないけど。いきなりなんだもの。しかも、知り合ってまだ間もないじゃない。」


「あっ、そこなの引っかかりは・・・。」


「もちろん、下河原さんに病気を引き受けていただくのは申し訳ないわよ。本当に。いくら好きだからってここまでしていただくのは心苦しいわ。」


 二人の話を聞いていた悟は、再び話し始めた。


「すいません、本当に大丈夫です。Ruriさんの才能にも惚れてしまったんです。この歌声はこれからこの世界に必要なんだと思います。未来を信じる。もっと、大勢の人に理解してもらいたいですね。」


「そんなに大層なもんじゃないと思うけど・・・。そこまで言っていただくのなら、お言葉に甘えてお願いします。ただ、その後の下河原さんの治療費は私たちが責任を持ってお引き受けします。」


「そこは、ご厚意に甘えたいところですが、出来る範囲で結構ですよ。僕も貯金なら結構持ってますから。今まで使う機会がなかったんです。」


「そんな、私たちで面倒見させていただきます。貯金は将来のためにとっておいてください。」


「分かりました。病気は必ず治して見せます。Ruriさんに負い目を持たせないためにも。」


「治るよね。私みたいに特殊な事情ないんだし。きっと、大丈夫だよね。」


「ああ、大丈夫さ。僕は他には病気はないんで、体力的にも充分だと思うよ。」


「それでは、下河原さん。ご迷惑をおかけしますが、Ruriのことよろしくお願いします。」


「なんか、変な感じだけど・・・。任せてください。ただ、これからその治療をしてくれる超能力者に会うための面接があるみたいなんです。今度の土曜日にRuriさんと会ってきます。」


「お願いします。さあ、簡単な食事を用意してますので、召し上がってください。」


 そう言ってRuriの母はソファから立ち上がった。


「用意が出来たらお呼びしますので少しお待ちください。Ruriも手伝って。」


「はぁい。じゃ待っててね。おいしい料理出すから。」


 二人がキッチンへ向かうと、一人になった悟は木曜日のカウンセリングのことに考えが及んだ。


 この決心は思考パターンセンサーで分かるんだろうか?自殺ではなくもっと前向きな心の動きなんで問題にされないのかな?

 それとも、なにを考えているかまる分かりになってしまうのか?いずれにしても、木曜日になにを言われるか不安だな。


 まあ、どう思われようと僕の決心は変わらないんで関係ないけど、面倒なことにさえならなきゃ・・・。個人的な話しには彼らも入ってはこれないだろうし・・・。


 そんなことを考えているとキッチンから悟を呼ぶ声が聞こえた。

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