第四章 1
翌日、住吉医師に連絡を取った悟は、「超能力科学研究室」と連絡がとれるという人物を紹介してもらった。
紹介してもらった高谷という男に連絡をすると、二人そろったところで会いたいということだったので、次の土曜日にテンゲンの先日Ruriと会った喫茶店を指定し、時間はRuriの都合を聞いてから再度連絡することにした。
その日の夕方、前日Ruriと話し合ったとおりRuriの母親に病気のこと、治療のことをはなすため、Ruriの家を訪問した。
インターフォンで到着を告げると、ドアを開けてRuriが顔を出した。
「遅くなってゴメン。少し仕事が押しちゃって。」
「いいの。お疲れさま。母も待ってるわ。入って。」
リビングに通された悟は、Ruriの母に挨拶をして勧められたソファに腰を下ろした。テーブルを挟んだ向かい側にRuriの母、その隣にRuriが座った。
「今日伺ったのはRuriさんの病気についてなんですが・・・。」
出された紅茶を一口口に含むと悟が話を始めた。
「はい、昨晩Ruriからだいたいのことは聞きました。この子は、こんな大事なことを今まで私に秘密にしてたなんて・・・。」
「すみません、私のような部外者が先にお話を聞いてしまいました。でもRuriさんはお母さんに心配をかけたくなかったって言ってます。」
「まあ、それでも親としては先に話して欲しいです。一人娘の生死に関わることですから・・・。まったく。」
そう言うと母はRuriを軽く睨み、話を続けた。
「それで、この子の病状は重いようなのですが、良い治療法があるということだそうですが・・・。」
「詳しいことは住吉先生からお聞きいただきたいのですが、Ruriさんは骨髄移植が必要な状態のようです。しかし、現状では適合者が現れるのは難しいと言うことで、今回の方策を試してみませんかと勧められたのです。」
「その方策って?。」
「厳密には治療法ではありません。いわゆる超能力を利用した病気の移し替えだと言うことです。」
「病気を移し替える?どういうことですか?」
「住吉先生も原理はわからないと言っていました。ただ、病気の人から他の人へ病気を完全に移すと言うことだそうです。」
「そんなことができるんですか?」
「僕も信じられないのですが、住吉先生の言うことには実際に移し替えて治った方も知ってらっしゃるということです。」
「でも、移し替える相手が要りますよね。骨髄移植のドナーを探すより難しいんじゃないかしら。…まあ、私に移してもらえばいいか。」
「そこをご相談に来ました。」
「えっ?」
「僕がRuriさんの病気を引き受けたいと思います。もう、Ruriさんと話し合って決めました。」
「なんで・・・。あなたが、そんなことを・・・。」
Ruriの母は、驚きのあまりソファーから腰を浮かし気味になりながら悟に向かって叫んだ。
「まだ、知り合って間もないあなたにそんなことをしていただくなんて、申し訳ないです。」
「いえ、そんなにお気になさらずに・・・。僕はRuriさんのことが・・・。」
「そんな・・・。ご厚意に甘えるわけには行きません。」
「僕がRuriさんなしではつらいと思ったんです。一方的な想いで申し訳ないのはこちらなのですが、男の僕の方が体力もあるし、お母さまより若いし生き残る可能性が高いんです。」
「そんなにRuriのことを想っていただけるなんてありがたいです。でも、下河原さんにそんなことをしていただく理由がありません。」
「僕は、Ruriさんのことを愛してます。彼女がいなくなるなんて耐えられない。そうなるくらいなら自分が変わりになろうと思ったんです。」
そこで、Ruriが母親に向かって話し始めた。
「お母さん。私も悟さんのことが好きなの。それで、悟さんに病気を移し替えるなんて出来ないって話したんだけど、どうしてもって・・・。それで、昨日話し合ってお願いしようって決めたんです。」
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