第53話 完全無欠のお風呂回
妹にしがみつき、ゆっくりと、そして慎重に階段を降りる。
片足を完全に宙に浮かして降りる為に、しっかりと妹にしがみつかなければならない。
妹にさわり放題状態で、妹じゃなければいくらお支払しなければいけないのだろうか? そういう所には行ったこと無いので知らんけど。
この小さい身体の何処にそんな力があるのだろうか? と思わされる程に、妹は俺をしっかりと支えながら脱衣場に連れて行く。
脱衣場に入ると、小さな椅子が既に置いてあり、妹は俺をそこに座らせ、一度外に出ていく。
俺はラップとビニールでしっかりと巻かれている足を眺めて妹を待った。
さっき部屋でしっかりと防水加工された足を見つめつつこれから風呂に、一緒に妹とはいる実感が湧いてくる……ってか、マジで入るの?
服を着たまま風呂に入る程俺は変態ではない……つまりは今からここで……全部脱ぐと言うことだ。
妹はタオルと着替えを持って再び脱衣場に入ってくると、高級魚を前にしたベテラン板前の様に俺を見つめる……えっと……俺今から捌かれるの?
その目を見て改めて思った。
やっぱり入るんだよね? 妹と一緒に……。
もう完全にまな板の鯉状態の俺、この足では妹から逃げる事は出来ない。
仮になんとかして片足で、一人で入る事が出来たとして……まあ、多分やってやれない事もないけど、滑って転んでまた救急車で運ばれ1日2回もお忙しい救急隊員様達にお世話になるなんて事は絶対に避けなければならない。
そしてそれを……看病でも介助でも介護でも、とにかく俺の世話は全部するって豪語した妹が許す筈もない。
「さてと」
全ての準備が完了したらしい妹がにこやかな表情で俺を見下げる、いや、見下ろす……。
完全に立場が逆転している事を俺は実感していた。
妹はつかつかと俺に近付き膝をついて屈む……。
「さ、お兄ちゃんズボン脱ごうね」
そう言ってズボンのベルトを外そうと俺のお腹辺りに手を伸ばした。
「い、いや、出来るから、両手は怪我して無いから」
「大丈夫大丈夫」
「いや、ちょっと待って」
「ハイハイ」
何を言っても聞く耳を持たない、妹は俺のズボンからベルトを素早く引き抜くとさらにズボンのボタンを外す。
「はいお兄ちゃん私に抱きついて腰を上げて」
さすがに座ったままではズボンは脱げない……。
「だ、だから自分で」
「い、い、か、ら、は、や、く」
顔は終始笑顔だが言葉はきつい……まるで聞き分けの無い子供を急かす母親の様な口調で俺を促す。
仕方ない……最後の砦だけは自分でと……そう考えて妹にしがみつき、腰を浮かすと妹は俺の腰に指をかけると一気に太もも迄下ろした……ズボンと……パンツを……。
「ひいいいいいいい!」
俺は慌てて妹から離れ両手で大事な所を隠した。
「ああ、もうまだ完全に脱げてないのに!」
「ちょ、ちょっと待って、マジで待ってくれ」
「ああ、もう何照れてるのよ!」
「そりゃ照れるだろ、恥ずかしいだろ!」
「私は今お兄ちゃんの看護師なんだから、お兄ちゃんもそう思ってよ」
「思えるか!」
「いいからほら足を上げて」
太ももから強引にズボンとパンツを抜き足首迄下げた。
いや、俺の脱衣シーンを逐一実況した所で、誰得なのはわかってる、わかってるけど、言わずにはいられない。
「じゃあ、はいばんざーい」
「ででで、出来るか!」
俺の両手は今最後の砦となっているので動かせない、誰だ片手で事足りるだろ?って言った奴!
「い、い、か、ら!」
「ぎゃああああああ!」
足に力が入らないと、上半身にも入らない、ましてや色々あってヘロヘロな俺は強引に両手を最後の砦引き剥がされ、Tシャツを無理やり脱がされ……た。
み……見られた……。
妹の前で……真っ裸で椅子に座っている……俺……なんてシュールな絵面。
妹は裸の俺なんて全く気にする事なく、服を洗濯篭に放り込む。
放心状態の俺は妹の後ろ姿を呆然と見ている……もうどうにでもなれと……思った直後……。
「!」
妹は後ろを向いたまま着ていたシャツを脱ぎ始めた。
「えええ!」
「ん?」
妹は俺の声に振り向くと、白いシンプルなブラを見せながら小首を傾げる
「い、いや、ゆ、雪も脱ぐの?!」
「あはは、脱がないと濡れちゃうでしょ? 私服着たままお風呂に入る程変態じゃないし」
「いや、いや、こういう場合って、水着を着てたりするんじゃ?」
お約束だろ?
「えーー着ないよ、てかさ、さっきからお兄ちゃんあわあわしてるけど、この間迄一緒に入ってたでしょ? 何を今更」
「こ、この間はタオル巻いてただろ?!」
恥ずかしいんだろ? だから巻いてたんだろ?
「ん? 巻いてもいいけど、外れちゃうと思うよ?」
そう言いながらスカートのホックを外し、ストンと床に落とす……。
下着姿の妹が目の前に……俺は慌てて目を反らした……。
恥ずかしい……それもあるけど……恥ずかしいより、その美しさに見とれてしまいそうになったから……魅了されそうになったから……俺は慌てて妹から視線を外した。
ごそごそと音だけ聞こえる……多分ブラを外し、ショーツを脱いだ音……俺の鼓動がドキドキと早鐘の様に打つ。
「ほらタオル巻いたよ」
そう言ったので再び視線を戻すと……バスタオルを巻いた妹の姿がそこにあった。
それを見て妹の姿を見て俺はとりあえずホッとする。
しかし、温泉の時はお風呂場で、しかも湯気で曇っていたので要所要所ははっきりと見えていなかったが、今はそんな怪しい煙はない。
妹の白い肌、きめ細やかで真っ白い肌がはっきりと見えてしまう。
すらりと伸びた足、太ももがはっきりと見えて、そしてそのすぐ上は……当然なにも着けてはいない。
「さあ、立つよお兄ちゃん」
妹はそんな事を考えている俺の事なんて全く気にせず、ヨチヨチ歩きの子供を立たせる様に俺の脇を持つ。
「うひゃひゃ、く、くすぐったい、いや、待って、俺にもタオルを巻かせろ、いや巻かせてくださいいいいい」
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