第41話 恵ちゃんからの告白
研修が終わったタイミングに合わせ、会社のPC関連が一新される事となり、その準備が終わるまで、社長に言われ土日を含め3日間休みを取る事になった。
一応電話にて、研修の事と合わせ、最後に星空さんと別々に帰った事を報告する。
社長は俺の前に星空さんに連絡をしていて、別々に帰った事は聞いているとの事だった。
そして、今は家に帰っていると聞き俺は一安心していた。
「何かあった?」
「いや、特には……」
勤務時間外とはいえ、出張先で泥酔したなんて言ったら聞こえが悪い、ましてや俺が飲ませたなんて思われたらたまったものでは無いので、そこは隠しておくことにした。
そして、社長への報告が終わり、電話を切ろうとしたその時、社長の近くにいたのだろう恵ちゃんが社長に代わって話しかけているらしく……。
「ごめんね、なんか恵が話したいって」
社長がそう言うと少しの間の後、唐突に恵ちゃんが喋り始めた。
「ねえねえ、堅兄ちゃん、明日暇?」
「は?」
相変わらずの口調、プチギャル、ファッションギャルの恵ちゃんは俺をデートにでも誘うようにそう言ってきた。
「ちょっと相談事があるんだ~~」
「相談事?」
「うん、えっと、あ~~大学の事とか~~?」
「へーー恵ちゃん大学行けるの?」
「行けるわ! なめんな!」
「あははは、じゃあ国立にでも」
「行けるか! なめんな!」
「あははは」
恵ちゃんは雪より一つ上の高校二年生、そろそろ進学の事を考える時期か……と俺はそう聞いて感慨にふける。
雪程ではないが、恵ちゃんも幼い頃から知っている、俺の妹の様な存在。
その妹が遂に大学に行くなんて言われると、なにかこう来るものがある。
引きこもりで、通信教育で高校を卒業した俺、でも、大学は一応それなりの所に通っていた。
勉強は出来るつもりだし、つい最近まで妹の勉強も、たまに見てあげたりしていた。
まあ、妹は出来が良いので、教える必要はあまりなかったが、恵ちゃんはそうでもなかった。
なので、社長の家に行った時に、恵ちゃんの勉強を見てあげたり、宿題の手伝いをしてあげたりもしていた。
「もうそんな時期か……いいよ、じゃあ明日家に来る?」
家庭教師に相談するような感覚なのだろう。
「えっとねえ、ちょい外で会いたいんだけど」
「え?」
「ああ、大丈夫、大丈夫、雪ちゃんには言ってあるから」
「いや、それは大丈夫だけど……」
一瞬雪と喧嘩でもしたか? と思ったが、恵ちゃんのその言葉はそれを否定した。
でも、それならなんで家ではダメなんだろうか?
「とりあえず、美味しい物でも食べながら~~」
「……奢らせる気か」
見た目に反してしっかり者の恵ちゃん、でも……昔から俺に相談があるって言ってくる時は、大抵何かしら重要案件である事が多い……小学生でピアスを開けたいとか、中学生で髪を染めたいとか……おじさんやおばさんを説得してくれと何度言われた事か……。
恐らく今回も何かあるのだろう、素直に大学の話しでは無いと、そう思っていた。
「ごちになりま~~す、って言うてさいぜとかだから~~良いでしょ?」
「社長の娘が社員に奢らせるとかないわ~~」
「あははは、じゃあ明日ねえ~~」
冗談めかしてそう言って電話を切った。
なんだろうか? 今度はなんの相談なんだろうか? 本当に進学の話? それとも雪の話?
そう言えば出張の時、雪が恵ちゃんと話しててメッセージの返信が出来なかったと言ってたけど。
一体なんの話をしていたのだろうか?
俺は翌日戦々恐々としながら、恵ちゃんに会った。
その日の朝から雪がソワソワしていたので、なにかあるなとは思っていたが……。
そして……やはり予想通り、進学の話は社長が近くにいた為のカモフラージュだった。
恵ちゃんは、俺の目の前で美味しそうにピザを頬張る。そして一切れ食べると、俺に向かって本当に軽い感じで、まるで朝の挨拶の様に、「おはよう~~」とでも言う様に言った。
「あ、賢兄ちゃん私もね、堅兄ちゃんの事好きだから、宜しく~~」
「……は?」
「だ~~か~~ら~~、私も賢兄ちゃんの事が好きだから、めっちゃ好きで、付き合いたいから考えて置いてねえ、よろ~~」
ピザを食べた手をペロリと舐めながら恵ちゃんは俺に向かって……そう言い放った。
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