第33話 送り狼
うーーん自覚無しか……。
3人で色々と話が弾む……っていうかこの目の前の二人のそれぞれの暴露話が殆んどだ。
子供の頃の話を、二人して赤面しながらの暴露合戦。
でも、桜ちゃんって、もっとクールな人だと思ってた。
うんうん、わかる、わかるよ……好きな人の前だと素直になっちゃうよね。
でもあまりの自覚の無さに、なんかモヤモヤとしてくる。
そしてそれを見せつけられている私って一体……。
「ねえ桜ちゃん、私の存在忘れてない?」
「え? ああ、ごめんつい」
「ああああ、つい俺の恥ずかしい話を、もうだめぽ」
「あはは、ねえねえ、二人はいつからの知り合い?」
「ああ、えっとね、生まれて以来の知り合い?」
「生まれて?」
「そうそう、こいつと俺は同じ誕生日、同じ病院で生まれたんたよ、そんでこの身長だろ? もうすっかり兄妹認定されてさ、高校でようやく違う学校になってホッとした所だったよ」
顔は似てないが、二人ともイケメンの類い、しかも丁度同じくらいの身長で、同じスポーツマン。
「こいつ? しかも今、兄妹って言わなかった? 姉弟だろ?!」
桜ちゃんは悟君の襟首を掴んでまるで{ピーー禁則事項}のような目付きで睨み付ける。
「何でわかった! あううう、ご免なさい」
そう謝る悟君の頭を掴んで拳でグリグリしている。ううう、なんか地味に痛そう……。
でもさあ……もうなんかこの二人イチャイチャし過ぎじゃない?
「まあ、とりあえずいきなり付き合えってのはハードル高いし、私もそこまでこいつの事責任持てないしね」
「こいつって仕返しか? そうか? そうなのか?!」
「ああ、もうウザい、今、折角あんたの為にゆっきーのアドレス聞いてあげてるのに!」
「えええ! マジ神、桜さんかっけえっす」
「ハイハイ、こんなおちゃらけてるけど、照れてるだけだからさあ、どうかな?」
「ああ、うん……いいよ」
私はスマホを取り出し、悟君とアドレスを交換した。
「ふおおおお!」
私のアドレスを見て本気で喜んでいる悟君、でも私は見逃さなかった、桜ちゃんの少し微妙な顔を……やっぱりか……。
「えっと……じゃあ、そろそろ試験もあるし、この辺にしとこっか……あ、そうだ悟、もう暗くなるからゆっきーを送っていきな」
「え? ああ、そうだな、ゆ……深澤さん俺に任せて、悪い奴には指一本触れさせねえ」
「え? だ、大丈夫だよ」
「ダメ、何かあったら私が困る、あ、悟! あんたが一番危ないんだから、送り狼になんてなったらただじゃおかないからね!! 家の近くまで送ったら帰ってくるんだよ!」
「わ、わかってるよ」
もうすっかり姉弟にしか見えない……その友人の弟に送って貰う事になった。
桜ちゃんと店の前で別れ、悟君に送って貰う。
多分お兄ちゃん以外の男の子と二人きりで並んで歩くのは初めての事。
「あ、あのごめんね送って貰って」
「あ、ああいいんっすよ、桜おっかねえから」
「あはははは、そんなに怖いんだ」
「そりゃもう、ブルブルもんですよ」
身体を抱え、困った顔で本当に身体をブルブルと震わせて見せる悟君。
「あははは、ねえ同い年なんだからため口でいいよ?」
「あ、いや、まだこれでいいっす……体育会なんで」
「理由になってないけど、悟君がそれでいいならいいけど」
今までお兄ちゃんに操を立てるって意味で、こういう事は避けてきた。
大げさかも知れないけど……誤解される事は一切して来なかった。
でも、こうやって実際に、近い年の男の子と一緒にいると、色々とわかって来る。
「あの……」
そんな事を考えていると、私の少し前を歩く悟君が唐突に止まって振り向いた。
そして真剣な顔で私に向かって言った。
「俺……一目惚れしたっす……初めてなんす……こんな気持ちになったの……だから桜に相談して、あの……俺と……付き合って欲しいです」
真っ赤な顔でうつ向きながら悟君は私に向かってそう言った。
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