第90話「と、言うわけで私の名前が決まったってわけ」
◇
「どうも皆様、初めまして秋山
「今日から同じクラスの仲間になるから皆、頼むぞ~」
工藤先生に促され教壇前で挨拶をしていたのはコバルトブルーとオレンジ色のメッシュの入った少女で瞳の色は真紅という派手な少女だった。
「秋山って……いや、そもそも君って……」
「えっと、ガイドちゃんだよね?」
そりゃ文化祭には二日も参加してたし、いくら背が伸びても見た目はそのままだから一緒に仕事していた連中は覚えてるだろう。
「はい、あれから色々と有りまして改名し本日よりお世話になることになりました」
「待てよ先月の文化祭までは小学生くらいだったろ!!」
元ガイド改め本日から俺の三番目の義妹となった那結果を見て金田が叫んだ後に俺の方を見たが俺は最近慣れてきた勇者の
「急成長って有るだろ……な?」
「い、いや……これは、余計なこと言わない方がいい系?」
「理解が早くて助かるぜ金大好きくん、いつものだ」
俺は金田がこれ以上余計なことを言う前に金塊を渡した。最近は言ってなかったが語呂的にこっちの方が覚えやすいんだよなコイツの場合。
「金田亥助だ!! いい加減覚えろよ」
「わ~ったよ……
「え? あ、ああ……まあ」
よし、上手くごまかした。そしてガイドこと那結果と目が合って頷くと俺の方に歩いて来て膝の上に座った。
「「「なっ!?」」」
「快利の近くの席が無いので私はここで結構です、いい、ですよね?」
俺は今更ながら那結果が同じ高校に通う事になった原因、つまり三週間前の出来事を思い出していた。
◇
光が晴れると俺の腕の中でガイドは気を失っていた。俺は全てのスキルを解いてガイドを介抱していると後ろからセリカとエリ姉さんが近寄って来る。
「大丈夫そうですわ私の『鑑定』でもステータスは正常になっています」
「そうか……寝てるだけか」
俺が頭を撫でるとピクッと反応した後に目を開けた。そして目が合った瞬間、ガイドはいきなり飛び起きた。
「大丈夫か? 動けるみたいで良かった」
「え、ええ……問題は、無い、です」
少し含みのある言い方だったが動けるようにはなったから問題は無さそうだ。このままバージョンアップもした方が良いんじゃないだろうかと聞いてみたが返って来た答えは意外なものだった。
「い、いえ……その、まだいいです」
「何言ってんだ? 次は俺の愛が必要なんだろ?」
冗談めかして言ったらガイドは珍しく顔を真っ赤にして慌て出す。何か変な事でも言ったのだろうか。
「そ、それはっ!? けっ、結構です、とにかく戻りましょう!! 先に行きます元勇者!!」
今度は転移して先に家に帰ってしまった。俺は不思議そうにエリ姉さんやセリカと顔を見合わせると全員で家に戻ったが、そこからが大変だった。
「おいガイド……前に話してた件だけど」
「所用が有るので失礼します」
「いや、編入学の……行っちまった、あいつの所用って何だ?」
「快利兄さん、編入学って何の話ですか?」
翌日もなぜか
「ああ、実はエリ姉さんと生徒会それにガイドと話しててな、ポイズンドラゴン戦の後にガイドも高校にいた方が良いんじゃないかって話になってな」
「そうだったんですか、それで絵梨花姉さんに相談を?」
最初はモニカやセリカにも話そうとしていたが文化祭の準備で忙しそうだから先にエリ姉さんと生徒会の面々と話してガイドにも話は通していたのに……謎だ。
「まあな、ノリノリだったのに……もしかしてブラッドの血の副作用か?」
「それはあり得ませんわ、私の鑑定も、あなたのスキルも使用したのでしょう?」
セリカの言う通りガイドを調べてみたが問題は無かった。ステータスも正常と出ていて大丈夫なはずだ。
「少なくとも異常が無いのは確実なら私が話をしてみようか? 同じ異世界出身同士だしな」
「ああ、頼むよ慧花……それで何で今日は家に居るんだよ?」
「もちろん快利に会うため……なのも有るけど私もガイド君が気になってね」
こういう察しが良い所は本当に助かる。思い返せば様々な局面で慧花には助けられた。貴族戦争や新生魔王戦の時には特に気を使ってもらった……だから最後はコイツを憎めなかった。
「まあ、少しだけ私は予想がついているんだ……任せたまえよ」
「ガイドはユリ姉さんの部屋にいるから、よろしくな」
ここ数日はユリ姉さんの部屋にいる事が多くて、あいつも体が有るから自室が欲しいだろうし考えなきゃいけないと思ってセリカとモニカと下に降りるとリビングにはエリ姉さんとルリそして意外な人がいた。
「あっ、やっと降りて来たわね快くん?」
「母さんっ!?」
親父とホテル暮らしなはずの夕子母さんだった。こっちに戻る時は割と連絡してくれるのに珍しいことがあるもんだ。それにルリも一緒に居るのも気になった。
◇
「母さん、どうしたの? 今日は確かモニカの当番だからご飯なら届けるけど?」
「も~、子供達の様子を見に来たのに悲しいわ~快くん」
「そうだよカイ、お義母様は今日は定期健診だったんだよ?」
ルリに言われて気付いた。まだ体形は変わってないけど義母の夕子母さんは妊娠中だ。今さらながら俺の家族は血の繋がりは薄い。まず親父と目の前の夕子母さんは再婚でそれぞれの連れ子が俺と姉さん達だ。そこに異世界から義妹二人を追加して混沌としているのが秋山家だ。
(ま、さらには俺を捨てたあの女や半分血の繋がった弟もいるしな)
そんな嫌な過去を思い出していると女性陣は皆で母さんを囲んで話をしていた。
「そうなのよ~もう三ヶ月だからお腹も……エリちゃんの時は五ヵ月くらいで大きくなったわね~」
「そうだったんだ……でも母さん、検診の時は誰かが付き添うって言ったでしょ?」
「そうです夕子母さん、私は時空魔術が使えますし何より快利兄さんは万能です」
エリ姉さんとモニカが心配するのも分かる。母さんは見た目は若くても間も無く四十で間違いなく高齢出産だから体は大事にしないといけない。それに家族で聞きに行った時に医者にも言われていた。
「でも快くん達は文化祭で忙しかったでしょ? なんだか悪い気がして」
「気にしなくていいのに、それにしても親父も母さんのために付き添いくらいやれっての……ったく」
俺が悪態をつくと母さんと何故かルリまで親父を庇い出して話を聞くと状況が見えて来た。
「昇一さんは病院前までは一緒だったのよ?」
「今日はうちの事務所に二人で来てて挨拶してたらカイのお父さんが急に外せない用事が出来たみたいで病院前まで送ってもらって後を頼まれちゃったんだ~」
何でも俺のことで後ろ盾のある組織、警察関係への圧力やポイズンなどの裏工作をしてくれた権力者から緊急で呼び出されたらしく悩んでいた所にルリが病院に付き添うと志願してくれたらしい。
「そうだったのかルリ、ありがとな」
「ううん、ちょうどカイにも会いたいと思ってたし、それに折角だから私も産婦人科とか見たいなって……将来のために……」
「そ、そうだな~後学のためっ――――「カイとの赤ちゃんのために……予習って大事でしょ?」
油断していたけど俺の推しのアイドルはこういう子でした。夕子母さんは孫より娘の方が遅く生まれたら恥ずかしいから避妊はキチンとしなさいとか、色んな意味で洒落にならない発言で場が若干凍った。
「って待って母さん、今、娘って言わなかった?」
「あっ、そうだった瑠理香ちゃんと病院で話してたから報告した気でいたわ……皆に報告、お腹の中の子は女の子で~す」
「妹かぁ……これで三人目だなぁ」
そんな話をしてお祝いムード盛り上がっていたら上の階から降りて来たのは慧花、ユリ姉さんと最後に隠れるように付いて来たガイドだった。
「あれ母さん、どうしたの?」
「あら奥様、お邪魔しています、ちなみに社長は一昨日来られました」
ユリ姉さんは良いとして慧花は完全に母さん側に着いて親父の監視をしているらしい。何でも取引をしたらしく内容が俺関連らしい。
「ユリちゃん今日は泊まって行くの報告が有ってね、それと慧花ちゃんは後で詳しく話してね~……と、あら? その子は?」
「この姿で会うのは初めてか、こいつガイドだよ声は何度か聞いたでしょ?」
「ああ、快くんの脳内のお友達でスマホに入ってた子ね~」
その言い方止めて母さん俺が危ない人にしか聞こえないから。全部正解だし間違って無いけど言葉を選んで下さい言葉は大事よ。
「改めてお初にお目にかかります、元勇者カイリのお母様」
「よろしく~、あら、そう言えばガイドちゃんの部屋はどうしているのかしら?」
「今はユリ姉ぇかモニカの部屋を行ったり来たりだったような」
「やっぱりそうよね~、さすがに八人と一匹は多いわよね……それにこの子も増えるとなると部屋が足りないものね……」
今日は母さんが居るからとかじゃなくて単純に狭い。ルリと慧花がいるのも有るけど人数が多過ぎる。でもまさか、この家が狭いなんて思う日が来るなんて思わなかった。親父が再婚するまで俺はこの家に殆んど一人で住んでいたから。
「リフォームしか無いかしら……でも、その間みんなホテルだと大変でしょうし」
「う~ん……魔法とか使えば出来なくも無いけど」
実際、便利屋勇者だった俺は建築から下水の整備に道路や橋の設置などなど土木関係でも大活躍だった。
「ですが元勇者のスキルは異世界ならまだしもこちらの世界では発展途上国の人間ですら住まないようなレベルの建築です」
「だよな、ガイド代案は?」
「はい、いくつか有りますが……一時しのぎで良いなら文化祭の時のように異空間を作り出して居住スペースを広げるのが可能です」
「なるほど、あれなら応用は効くな……当座はそれで良いとして後は?」
そして色々とモニカやセリカさらには慧花とも話し合った結果、我が家を大幅に魔改造出来そうなプランが出来た所で俺は気付いた。
「ガイド、お前普通に話せるじゃん」
「そうですわね、ガイドさん快利を避けていましたのに」
セリカの言った通りでエリ姉さんも頷いていた。しかしユリ姉さんや慧花は訳知り顔で曖昧に頷いて、モニカとルリに至っては何かに気付いた顔をしている。
「はっ!? そう言えば……で、でも、そのぉ」
「どうしたんだよ、本当に向こうで一緒に戦った大事な相棒としては気になるんだよ、お前の変化は……」
また逃げようとするガイドの手を握って正面を向かせるとオレンジとスカイブルーの髪の毛に真紅の瞳に俺が写っていた。そして皆が動けない静寂の中で響いたのは母さんの声だった。
◇
「なるほど……快くんは気付いて無さそうね~、ほんと昇兄ぃとソックリ……」
「母さん?」
俺が母さんに気を取られた一瞬の隙を突いてガイドは慧花とユリ姉さんの後ろに隠れてしまった。
「う~ん、慧花ちゃんガイドちゃんが戸惑ってる原因は分かってるの?」
「はい奥様、先ほど上で由梨花と聞き出しましたので……お耳を拝借」
二人が内緒話をしている間に俺はユリ姉さんを見た。目を反らされたから確定だ何か知ってるし、ガイドは後ろで威嚇する子猫のようにこちらを見てくる。よく見るとポロも後ろにいてエサの皿を置いていた。
「快利、これは自分で察してあげて欲しいかな」
「そもそも、これはカイが悪い!!」
「え? どういう意味だよルリ……」
曖昧に答えるユリ姉さんとビシッと指を差してこちらを見るルリを見ていると紅茶のおかわりを注いでいるモニカまで俺を見て喋り出した。
「自覚症状が無いのがマイマスター、いえ快利兄さんらしいですね」
「……なるほど、理解致しました」
「私も分かったぞ……原因はともかく流れは察した」
おまけにセリカとエリ姉さんまで俺を見て苦笑してポンと両肩を叩かれた。二人してどうしたんだろうか?
「なるほど、それはそれは大変だったわねガイドちゃん?」
「ううっ、ご迷惑を……おかけします」
よしよしと頭を撫でられているガイドは夕子母さんに抱き締められていた。意外と可愛いとこ有るんだなガイドのくせに……。
「快くん、ガイドちゃんのことを慧花ちゃんに聞きました。大丈夫、女の子には普通に有る事よ」
「いや母さん、何言ってるの? ガイドは俺の相棒で魔法――――」
「いいえ、違います、ガイドちゃんは一人の女の子よ」
キッパリと宣言するけど違うから、ガイドは俺の魔法演算補助システムが身体と言う器を得ただけの存在だからと説明したが聞き入れてもらえず更に言い合いになるが母さんにしては珍しく一歩も譲らない強い言い方だった。
「いやいや、ガイドは見た目が女の子だけど――――「快くん!! ガイドちゃんは女の子です……い・い・わ・ね?」
「アッ……ハイ」
今、初めて親父の気持ちが分かった。この圧は強過ぎる。夕子母さんは秋山家への特攻でもあるのだろうか……。そして夕飯の買い物をしてくるように言われて慧花とユリ姉さんに外に連れ出されてしまった。
◇
ガイド視点
「よし、快利は行きましたわガイドさん、ご自身でも確認されては?」
「問題は有りません、慧花様が付いているので問題無いかと」
私は今、元勇者が何よりも大事にしている方々に囲まれていた。ついこの間までは取るに足らない元勇者の枷にしかならない人間たちだと思っていた。
「私はどうしてしまったのでしょうか……」
「慧花ちゃんに聞いたわ……戸惑っちゃうわよね?」
「ですが……」
慧花様、いや慧花さんや由梨花さんに指摘された事は衝撃的で二人の推論が正しいと私もすぐに理解出来てしまった。
「認めた方が楽だよ~ガイドさん、下手に長引くと私みたいにカイに酷い事しちゃうかも知れないから……さ」
「瑠理香さん……ではこれが感情……なんですね」
私は今まで感情を理解した気でいたし元勇者と受け答えをしていたのは全て彼の望むパターンを分析し受け答えしていただけだった。あの時ブラッドの血を受けた時も今の身体を破棄しても問題無いという判断からだった。
「それがこんな事に……」
「ですが本当なんですか? 四体の龍を取り込んだ結果……精神が人間とほぼ同じになってしまったなんて……」
「慧花……さんの話だと龍は
つまり私はシステムが汚染されて今度は浄化された事によって何らかの変化が起きて感情を取り込んでしまった事になると慧花さんは話していた。
「あとは由梨花さんとフラッシュドラゴンさんも同じ推論を立てた上でさらに飛躍し皆様のカップルスキルを受けた勇者も原因ではないかと言っていました」
「どういう事か説明してくれないか?」
絵梨花さんの当然の疑問に夕子さん以外の女子の目が一斉に私に向いた。でも元勇者と視線が合った時に比べれば大したことでは無かったから話を続けられる。
「瑠理香さんやモニカさんのバフ効果スキルに絵梨花さんの結界、そして由梨花さんのドラゴン達の結晶体それらを受けた私はブラッドの血の支配から逃れる事が出来ましたが……代わりに」
「快くんを見るとドキドキするようになったのね?」
「はい……理解出来ませんが目が合うだけでシステムエラーが……うぅっ……」
今までは何ともなかった上に元勇者の好きな悪友、軽口を叩ける友人という設定で付き合っていた会話も満足に出来なくなって目を見るだけで胸が苦しくなっていた。
「ふふっ、恋ねぇ……」
夕子さんが普段とは違う、勇者の中から見ていた時とは違うイタズラな笑みを浮かべていて頭を撫でられると不思議と落ち着いた。どうしてだろうか私はこの人を軽蔑すらしていたのに……。
「恋か……」
「ライバルが増える~」
「だって快利兄さんですし」
ギャラリーも良い感じでうるさいですが一人だけ静かにしていたのはセリカさんだった。そして私を見ると複雑そうな顔をしていた。それからも私の生まれて初めての恋愛相談をしている内に元勇者たちが帰って来た。
「ただいま~っと……てか慧花さ、スーパー行く時は魔法とか使えないから車で来てくれよ」
「ああ、あれはクラブのママのを借りているだけだからね普段はお店の駐車場なんだよ、それに君ならいざとなれば手段はいくらでも有るだろ?」
「やっぱり私はマリンに乗っけてもらって行くのが一番だと思うのよね」
そんな三人を見ていると私はなぜかイラっとした。そして羨ましいという感情を知った。確かにポイズンドラゴンあなたの言う通りこれは毒です。甘美で人を狂わせる厄介なもの、私は心の中で今は取り込んだ敵に自然と恨み事をぶつけていた。
◇
「それで……行けるんだな?」
「はい、心の整理が付きましたので」
心の整理……やはり慧花とユリ姉さんの言っていた通りなのか、俺は買い物の途中に二人が明らかに時間稼ぎのカフェに誘われたが黙って付いて行った。ちなみに俺の奢りだった。
「そうか、でも慧花とユリ姉さんに聞いて驚いた」
「きっ、聞いたんですか!? そ、そんな、それは困ります」
「ま、困るよな……俺もビックリしたし」
「で、ですが私の心は今まで通り、心配はご無用です!!」
俺も二人に聞いた時には驚いた。まさか感情が生まれて混乱してたなんてドラゴン達の能力が互いに反応して起きた現象だとは思わなかった。
「そうか……じゃあ始めるか、お前の身体のバージョンアップを!!」
「はい……お願いします、快利……」
元勇者から呼び方が変わった……ガイドなりの第一歩なわけか、じゃあ俺も気合を入れよう。そう考えて俺達は結界を張った庭に二人で出た。
「じゃあ行くぞ俺の神気と魔力を付与するだけで良いんだな?」
「はい、今はブラッドの血からも制御下に置きましたので……では、お願いします」
そして俺の力の付与を受けたガイドの体は光に包まれ幼い姿から一気に成長していた。身体的な特徴としては背が伸び丸みを帯びて完全に子供から女性らしい体付きに変わっていた。
「どう……でしょうか?」
「いや、うん……驚いた」
光が晴れるとそこには成長したガイドがいて今の体に合わせた白いワンピースを着ていた。そして俺は全てをチェックした後に結界を解除した。
「終わったの……って本当に大きくなったわね」
「あらあら、快くんの魔法は凄いわね……」
母さんとユリ姉さんがガイドを見て呟くと他の面々も集まって色々と話をしていた。その間に俺はユリ姉さんと慧花を見て頷いた。実はサプライズが有るのだ。
「さてと……ガイド、これ受け取ってくれ」
「これは?」
「高校用のバッグ……来月からお前も同じ高校だからな」
包みの中はユリ姉さん達に選んで貰ったバッグで本人たち曰くJK御用達の店で一番の人気商品らしい。
「あっ、例の……そうでした……これで一緒に」
少し頬が上気して赤くなった目も潤んでるように見える。本当に感情が有るんだと思ったと同時に少しだけ照れくさくなった。
「ああ、だけど高校に行くには必要なものがまだ有るんだ……それを今から渡す」
「なんでしょうか?」
「それはな……秋山
多くの想いと世界を結んだ果てに生まれた俺の相棒という意味だ。実は高校編入用の偽装書類に名前が必要でストレートにガイドでは目立つから別な名前が必要で俺が那結果と勝手に名前を付けてみた。
「え?」
「ま、ガイドだとこれから先は色々と不便だから、どうだ?」
「
「ああ、嫌だったら自分で――――「那結果が良いです……あなたから頂いた大切な名ですから」
そう言うとギュッと大事そうにバッグを抱きしめて俺を見上げている。成長したと言っても背は俺より低くし平均的な女子高生より少しだけ大きいくらいだから当然と言えば当然だ。
「快利……改めて伝えたい思いがっ――――「じゃあ那結果これからもよろしく頼む、相棒兼最高の悪友としてな!!」
「えっ?」
「「「「え?」」」」
なぜか那結果とエリ姉さん達が驚いた顔をしていた。母さんに至っては目が点になっていた。
「ああ、慧花とユリ姉さんからしっかり聞いたからな!! 感情が生まれて驚いただけなんだろ?」
そう、ユリ姉さんと慧花と二人とお茶した時に聞いた話では普段通り接したいのに出来ないという話だった。ならば俺だけは変わらず今まで通り接しようと考えた。
「向こうの世界にいた頃からお前には下ネタ全開で話せたから急に女の子に変わって内心、割と焦ってたたんだけど、今まで通り接してやるべきだと考えたんだ!! な~に相棒のピンチだって俺にとってはヌルゲーだぜ?」
「なっ、違う快利そういう意味では――――」
慧花が何か言ってるが俺はコッソリ那結果に耳打ちすると耳まで真っ赤でなぜか震えていた。
「ガイドさっそくで悪いが後で俺の部屋のPCの偽装をまた頼む、エリ姉さんのチェックが厳しくてさ……」
「…………た」
「え? なんだって?」
難聴系じゃ有りません素で聞こえませんでした。那結果さんもう一回答えて下さいプリーズ。
「Dモードの実戦テストをしたくなりました……」
「へ?」
無防備な俺の手を掴むとニヤリと那結果が不気味な笑顔を浮かべている。そしてバージョンアップした姿で初のDモードを展開した。何かオーラが赤いからブラッドの能力かな?
「DモードVer.カルテット……」
「カルテット? 四重奏……まさかっ!?」
「私はぁ……」
何か那結果さんが盛大に光ってらっしゃる。そして気付けば俺の周りには誰も居なかった。
「元勇者カイリ!! あなたがっ!!」
「那結果さん!?」
そのまま空に放り投げられる。俺が何をしたんだと言う前に那結果の方が先に叫んでいた。
「大好きなんですうううううううううう!!」
次の瞬間、俺は
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