第89話「愛で空は落ちないけど意外な奴が落ちそうな件」




「不服です……」


 珍しく、いや恐らく身体を手に入れてから初めてムスッとした顔をするガイドは不満を顔いっぱいに表していた。


「仕方ないだろ動けないんだから……」


「ですが、せっかくのサポートするための身体を得たのにこれでは……」


 ブラッドドラゴンとの決戦の最中、未完成の体で奴の能力を妨害したまでは良かったのだが、その後は自ら緊急機能停止したのが昨日の事だ。幸い今朝方には意識を取り戻したが問題が発生していた。


「無理やり機能停止シャットダウンして、おまけにブラッドドラゴンの血を直接受けてボロボロだから動けないんだろ」


「ええ、ですので同時に今の身体をバージョンアップする必要が有ります」


 今のガイドは首から上しか動かない。ブラッドドラゴンの血を取り込んだ副作用で体の制御が効かないから自動ロック状態になっているそうだ。


「そう言えば今の身体は未完成だったな、それで行けるのか?」


「はい、ですが……少々問題が発生しました……」


 ガイドが問題と口にするのなら少々じゃ済まないのだろう。俺が促すとガイドは逡巡した後に口を開いた。


「足りないのです……バージョンアップに必要なものが……」


「なんだ、そんな事か、何が足りないんだ? 俺が用意出来るなら手伝うぞ」


 どうせ遠慮しているのだろうと思ったから気軽に言ってみたが反応が鈍い。しばらく待っているとガイドはこちらを見て言った。


「……いいえ違います。足りないのは元勇者カイリの『愛』なのです」


「は?」


 部屋のベッドで横になっているガイドが真顔で言った言葉に俺は固まった。今コイツなんて言ったんだ。なんでそこで愛なんだ。


「今回の戦いでよく分かったのです、私に足りないのは『愛』だと」


「どうしたんだ!? お前まさかブラッドの攻撃のせいで機能に異常がっ!?」


 俺が大声を上げると、すぐにモニカとエリ姉さんが部屋に入って来た。モニカはお茶を持ってるから分かるけどエリ姉さんは自室で盗み聞きでもしてたのだろうか。


「いきなり素っ頓狂な声を出して、お姉ちゃん思わず心配になって盗み聞きを中断して来ちゃったぞ」


「予想通りだったなエリ姉さん……それよりガイドが変なんだ二人とも!?」


「マイマスターどうされたのですか、ガイドさんは最近やっと脳内から現実の世界に出て来たのですから多少は……」


「愛が足りないとか言い出したんだこいつ……」


 俺が放った一言で二人は一瞬だけ固まると「何言ってんだこいつ?」みたいな顔をして何事も無かったかのようにスルーした。


「何で普通に流してるんだよバグだよこれ!! 絶対どっか壊れたぞ!!」


「快利、お姉ちゃんはお前の将来が心配でエッチな知識に関して厳しく制限したし、瑠理香の話も聞いてお前が極度に自己評価が低いのも分かっている……だがなぁ」


「異世界でもしかりです絵梨花姉さん、マイマスターは……快利兄さんは色々と鈍感系主人公ですから」


「いやいや俺は鈍感系は卒業したから!!」


 これでもルリの事は真剣に考えてるしエリ姉さんとユリ姉さんから告白されて悩んでる。目の前のメイドに奥の部屋にいるセリカの事だってキチンと考えてる。


「じゃあ何でガイドの気持ち分からないの? 女の子よその子だって」


「いや、見た目が女なだけで中身は……そう言えばお前って性別有ったの?」


「本来、性別はありませんでしたが元勇者が脳内で女の事ばかり考えてた結果、性別が女性に固定されました」


「言い方っ!! 言い方は大事だからなガイド!!」


 異世界では女性は不遇な扱いが多くてそれを無償で助けていただけで今の言い方じゃ、まるで俺が異世界で女狂いになってたように聞こえるから極めて心外だ。


「それでガイドさん、本当はどういう意味なんですか」


「はい、モニカさん私は知りました……愛の力を……あれは素晴らしい」


 顔を真っ赤にして目は爛々と輝かせているその顔はどう見ても恋する乙女ではなく何か新発見したマッドなサイエンティストにしか見えない。


「で? どう素晴らしいんだガイド」


「はい!! カップルスキルは元勇者カイリへの愛が昇華され気持ちが通じている者達の間でのみ成立しています!! つまり私に愛が実装されればスキルを習得できるのです」


 やっぱり戦略的な面から必要だとガイドなら考えると思っていたが予想通りだった。そりゃ分かりますよ長年一緒に戦って来た相棒だから。


「気持ちが……」


「通じているっ!?」


 だが違う所に反応したのがエリ姉さんとモニカだった。ガイドは俺とステータスがリンクしてるからスキル特性や発動条件まで話してしまう事が有る。この間の英雄化の効果バレなど正にそれだ。


「両者の気持ちが通じ合っている事がカップルスキルの習得及び発動条件なのです」


 ちょっと待て、それじゃあ今までスキルを覚えたルリとエリ姉さんとユリ姉さんとモニカとは……いやいやいや、そりゃ俺も少しはね、そう思ってるよ。だけど……マジですか。


「ふっふっふっ、快利!! お姉ちゃんと姫始めだああああ!!」


「まだ10月だし、今年は残ってるし、そもそも姫始めの本来の意味は、そんな意味じゃないだろおおおお!!」


 真っ先に襲って来たエリ姉さんを勇者特製ロープで縛って床に転がす。二人きりなら流されていたかもしれない。だけどそういうのは違う、もっと大事な事が有る。


「――――雰囲気とかが大事なんだよ、気持ちとか色々と大切な事が有るのに……とか処女おとめみたいなこと考えてるに違いありませんねマイマスター!!」


「オメーは夢も希望も無いこと言ってんじゃねえぞモニカ!!」


「女に幻想を持ち過ぎると後でダメージが大きいですよマイマスター!! ここはサクッと私と大人の階段を駆け上がりましょう!!」


 最近は見直してたし一昨日の戦いで助けに来てくれた時なんて感動してたのに今日まで積み立てたポイント全ロスだ。俺は襲い掛かるメイドもロープで縛り上げて床に転がした。


「ふぅ、ガイドが余計なこと言うから……セリカとか慧花みたいな勘のいい奴にバレたら大変なんだよ」


「わたくしを呼びましたか快利? 由梨花姉さんが呼んでいましたので……って何をしてますの?」


 タイミングが完璧だなセリカ、とにかく今は話を逸らさないといけない。冷静に考えるんだ。


「元勇者カイリと愛について話しておりましたセリカさん」


「ガイドさぁ~ん!!」


「これは……詳しくお話した方がいいですね先ほど殿下、ではなく慧花さんも転移魔術で来たので」


 これは詰んだな……今日の夕ご飯は俺への尋問になりそうだと考えながら床に転がした二人の拘束を解いた後に俺は食卓へ連行された。





「なるほど……それで『愛』についてですか……」


「そうなのですセリカさん」


「ほれ、ガイド口開けろ、あ~ん」


「あ~ん……あむっ、いまいち愛情が伝わりませんね、やり直しを希望します」


 俺は動けないガイドにユリ姉さんの作ったシチュー食べさせていた。カップルスキルの実証のためと過去のデータを自分なりに分析した結果がこれだそうだ。


「そう言えばユリ姉さんいつの間にシチューなんて作れるようになったの? 俺教えてないよね」


「ああ、それはね――――「私が教えたのさ快利!! 学食でシチューを食べていたら話題になって私の部屋で練習したのだよ」


 横から乱入して来たのは我が家に転移魔術で不法侵入(許可済み)をして来た慧花だった。そもそも勇者の結界には同等の力を持つ者しか侵入なんて出来ないから許可済みの人間しか入れない。


「ふ~ん、それでカイがガイドさんに「あ~ん」してるんだ羨ましい……私だって三回しかしてもらってないのに……」


 当たり前のようにルリが居るのは皆にフェアじゃないから連れて来いと言われたからで事務所でレッスン上がりのルリを捕まえて皆で夕食と言う話になった。


「連れて来ておいてアレだけど今日は大丈夫だったのか?」


「うん、今日は文化祭までセーブしてたレッスンとか事務所内で出来る仕事やってたんだ、来週からは逆に私が忙しくなるから」


 来週からは逆に綾華さんや南美ちゃんの高校で文化祭が有るらしく今週まで仕事でカバーしてくれた分、ルリがラジオ収録や撮影に一人で臨むらしい。


「なるほど、しかし綾華さんって仕事一筋みたいな感じだし仕事とかガンガン入れて行事とかサボりそうなイメージだったんだけど……」


 あの無駄にクールで理解力が早く魔王が襲って来ても動じなかった美女が高校の行事を大事にするなんて意外だった。


「三年生の行事は思い出に残るから彼女も思う所が有るんじゃないか?」


「確かにエリ姉さんは思い出には残っただろうね、独壇場だったし」


「違うんですよ絵梨花さん、実は文化祭はAYAが知人と会える絶好の機会だから毎年気合入れてるんです」


 売り出し中のアイドルの綾華さんはプライベートで知人と会うのも一苦労で、こういう機会に家族や親しい人たちを招待して会っているそうだ。


「綾華さんも色々と大変そうだな……じゃあ来週はルリ専属になるのか?」


「あ~、それは少し待って欲しいって母さんが言ってた、後でスマホに連絡行くかも知れないからよろしく」 


 そんな話をしていたらガイドが雛鳥のように口を開けて「あ~ん」をご所望で食べさせると43点と理不尽な採点をされてしまった。


「やはり愛情が足りませんね……もうキスでもするしか有りませんか」


 急にそんなこと言い出すから驚いていると真っ先に反応したのは予想通りエリ姉さんだった。


「それはダメだ!! お姉ちゃんだってした事が無いんだ!!」


「そうですわガイドさん、それにキスなんて忠節の証でもあるのですから愛はそれほど生まれませんのよ」


「なるほど、確かに向こうの世界ではそのような扱いでしたね……早計でした」


 いいぞセリカもっと言ってやれ、実際向こうにいた頃は手の甲にキスとかやってたんだよ俺。まだ現代人感覚が残ってた頃は恥ずかしかったけど式典だので数をこなしていく内に慣れたんだ。


「ちょっと待ってセリカ……それじゃカイとキスした事が有るの!?」


「確かに、今の言い方ってそう言う事よね……快利」


 二人とも顔が怖いよ。ルリの瞳なんてよどんでるしユリ姉さんは口元は笑みを浮かべてるけど目が笑ってない。


「はい、もちろん手の――――「そして当然、元王族だった私もされたぞ!!」


「待て慧花ややこしくなるから止めろ!! ユリ姉さん、ルリも違うんだ」


 慧花にもした事は当然有るに決まってる。ただしキスをしたのは手の甲だけで決して口での直接的なキスはしてない。ああ言うのは簡単にしちゃダメなんだ。


「そう言えばセリカ様が羨ましかった思い出が有ります。よくエスコートされてましたしダンスも……私なんて思い出は一緒に添い寝くらいしか……」


「「「なっ!?」」」


 現代人が反応するような言葉は止めてモニカ。あれはお前が十三歳で、お風呂だって同じ年齢までしか……ん? もしかして向こうの世界で問題無かったけど俺ってこっちでは犯罪者なのでは……ま、まさかな……。


「添い寝は強いな……妹扱いだったモニカだから出来た技か。あとマウントを取るとしたら一緒に旅したり風呂に入ったりしたくらいかな」


「ケニー……じゃなくて慧花!! いい加減にしろ、あん時はお前は男だったろ」


「気持ちは常に乙女だったさ、カ・イ・リ?」


 時間魔法使って背後に回り込まないで、そのまま抱き着かないで下さいお願いします。いい匂いするし柔らかいしで俺の理性が吹き飛ぶ寸前なんだよ。


「ああっ!! 慧花さん協定違反ですカイに抱き着いていいのはデートの間だけです!! それと混浴なら私だってカイと二回してますぅ~!!」


「その通りだ!! あとお姉ちゃんは中学の頃に三回ほど快利が風呂に入っているのを覗いたことが有るんだぞ!!」


 変な協定結んでたんだなこの人達……それとエリ姉さん何か凄い事を言いやがりませんでしたか。


「えっ、じゃあ中学の頃に風呂場で俺が説教された時って……」


「今だから云えるがあの当時は思考回路がショート寸前でな……咄嗟にごまかすために説教しただけなんだ……」


「でもエリ姉さん、あの時『姉が出て来るタイミングで全裸を見せつけようとは情けない』って顔真っ赤にして怒ってたよね?」


「ああ、だって当時の私は純情で、どうしよう義弟のアレが中学生なのに大きい……なんて思ったりして思わず怒ってしまったんだ……すまん快利!!」


 俺は本当に心から反省して許してと泣いて謝ったのに目の前の義姉は俺のアレを見てそんなこと考えてたのかよ。


「ま、良いけどね……もう俺には八年前の話だし……あと覗きとかはもうしないでねお風呂くらい静かに入りたい」


「ふむ……つまり痴女共の話を総合するとデートをして風呂に入って添い寝をすれば愛が生まれるのですね、では残る問題は……」


 ガイドが嫌にザックリと雑なまとめ方をしたが伝わってしまう恐ろしさに俺は愕然としていたが同時に最後の一言が気になった。


「いや愛が生まれるかは当人たち次第だから、それより残る問題って?」


「はい、お忘れでしょうが私は今、身体が動かないのです」


「いやいや、だから愛が無いと動けないんだろ? 今のお前って」


 確かそんな話だったはずだ。しかし返って来た答えは違った。


「はぁ、そんな非科学的なことが世の中に有ると思ってるんですか? 相変わらずロマンチストですね元勇者は……」


「お前が言ったんだよな!! 動かすには愛が必要だって!!」


「いいえ、バージョンアップに必要だと答えただけで身体を動かすだけなら別の方法が有るのです……ふぅ」


「ため息付きたいのはこっちの方なんですがね!!」


 散々言い合いになったが回復方法を何とか聞き出した俺達は驚いた。ガイドが言い渋っていたのも納得な危険な方法だった。





「よし、全員いるな?」


 俺達は夕食後に異世界の別な星、つまりマリンやグラス達ドラゴンの住んでいる場所に転移して来た。俺はガイド抱っこし、慧花はセリカとユリ姉さん、そしてモニカはルリとエリ姉さんをそれぞれ転移魔術で運んでもらった。


「ああ、転移完了、問題無しだ、モニカはどうだ?」


「はい、超越する主従の絆ブラコン&シスコンで周囲を最大限まで索敵しましたが周囲には誰もいませんし、この星を一周して来ましたが敵はいません」


 全員が広場に集まると俺は中央にガイドを降ろして少し離れた場所で鎧を装備し神刀を構え、聖剣を慧花に渡した。


「じゃあ始めるかガイド……皆は準備を!! ルリから頼む」


「うん、じゃあ歌うねカイと今回はガイドさんのために!!」


 ルリが歌い出すと歌姫の守護騎士ナイツ・オブ・ディーヴァが起動し俺の周囲に青い光が浮かび上がる。


「行くぞ!! 英雄化発動……エリ姉さん!!」


「分かった……快利、後ろから見ているからな!!」


「うん、姉式・爆熱無限呪縛の陣ブラコン・バーニング・ゾーン発動!!」


 今度は周囲に灼熱地獄のような結界が広がる。フレイムドラゴンよりも熱いエリ姉さんの情熱の炎らしい。これで周囲への影響だけは完全に抑えられる。


「セリカ頼む!!」


「はい、では久方ぶりにこの鎧をまといました。ガイドさん離れないで下さいね?」


「離れたくとも動けませんので、ご安心をセリカ様、この度はご迷惑を……」


「問題有りません、当家の家宝『炎神の鎧』その力はご存知ですわね?」


 カルスターヴ家の家宝は三つ、一つはセリカが身に纏う真紅の鎧の『炎神の鎧』、スキル『鑑定』の継承権、そして炎極魔法『紅蓮の裁きインフェルノ』の三つで形として有るのは鎧のみだ。


「はい、その鎧を纏った先代のカルスターヴ侯に私と元勇者が助けられたのは一度や二度では有りませんから、全ての炎の力を無効化する最強の鎧ですね」


 俺達が今何をしているか、まずガイドは首から上しか動かず当然ながら力を失っている状態で原因はブラッドの血だ。それを今から浄化するのだが実はそれが完了すれば動けるようになるらしい。


「つまり愛なんていらなかったんだよ!!」


「いえ、私もカップルスキルが欲しいので愛は欲しいのです!!」


 あくまでバージョンアップ後の身体にカップルスキルが欲しかっただけらしい。言い方が紛らわしかった。


「そこら辺は帰ってから考えましょ、快利そろそろ私の出番でしょ?」


 横に来たのはメイド服のユリ姉さんで手を差し出して来た。その手を握り返すと今度は緑色の光が俺に加わる偉大なる竜の乙女Great Drachen Mädchenが発動して俺の周りには白と黒以外に四色の光が集まった。


「じゃあユリ姉さん号令よろしく」


「ええ、みんな来なさい出番よ!!」


 ユリ姉さんが言った瞬間、ガクンと俺から神気と魔力が抜けて行くと同時に後ろのルリが次の曲を歌い出して俺の力が回復していく。


「三体同時はキツイぃ……」


「よし、じゃあマリン、フラッシュそしてグラスお願い!!」


 三体のドラゴンがユリ姉さんの号令で同時に出現する。何かポーズとか決めているが色々と練習したらしい。


「りょ~かいです、ご主人様!!」


「お任せをマスター!!」


「手筈通りに行くぞ二人とも!!」


 フラッシュが叫ぶと三竜は水と光と鱗粉を空中でぶつけ合わせ、その反動で軽く衝撃波が生じた後に煙が晴れるとその中心で白い光の玉が浮かんでいた。


「これが三竜の魔力の結晶……」


「きれいですね……おっと、危ないですわ!!」


 ドラゴン達の光に気を取られていると制御が効かない結界内の炎がガイド達に襲い掛かるがそれをセリカは鎧で完全ガードしていた。


「よし、セリカあと少し頼むぞ……慧花!!」


「ああ、しかし私の聖属性技で大丈夫なのか不安だが」


「ガイドの試算では俺の技じゃ強過ぎるから慧花に頼むんだ、頼む」


「そうか、君に頼られるのは悪くない……行こう!!」


 俺達は三竜の魔力の結晶体の光の玉に向かおうとするがユリ姉さんと手を放した瞬間、マリン以外の二竜は力を使い果たしグラスは小型化しユリ姉さんの腕の中に落ちフラッシュはスマホの中に戻ってしまった。


「三人ともご苦労様、マリンはあと少し維持をお願い!!」


「お任せをマスター!!」


「大丈夫、後少しだ……慧花!!」


 聖剣を構えた慧花が聖なる斬撃を光の結晶を斬りつけると輝きが増した。続いて俺が光の玉を消さないように丁寧にそっと掴んだ。


「よし!! セリカは後退して慧花と一緒に離れてくれ!! ユリ姉さんもエリ姉さんの後ろに!!」


 指示を出して全員が離れるのを確認しながら迫る炎を素手で弾いてガイドの側まで飛び、そのまま抱き寄せる。そして目を見て頷くと神刀を胸に突き刺した。


「ぐっ……」


「こんな感じで大丈夫かガイド」


「はい……では頼みますカイリ!!」


 そして俺は神刀の斬りつけた場所から光の玉を押し込んだ。苦悶の表情を浮かべるガイドに俺は玉が全部飲み込まれたのを確認すると再び神刀で斬りつけた。そして光が周囲に弾けて何も見えなくなった。

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