第11話 バカはバカなりに頑張る③


 春野から春野になり、その後の葵さん・・・ではなくて、本当は葵な葵は無事に葵に変わることが出来た。


 ・・・・・何かの謎かけみたいだな。俺みたいな頭でも理解できてしまう辺りとても残念で不出来な謎かけなんだけど。


 そんなこんなの一連の俺の苦労とは言えない苦労の後に起こったのは、ドンチャン騒ぎだった。


 無事に女の子から男の子に変わった春野くんは感動なのか戸惑いなのかずっと自分の体をあちこち触っては確かめていて、男の娘から女の子の葵に変わった葵さんは泣き崩れてグズグズになってしまった。


 ドンチャンと騒いだのは周りの人たち。


 その中でも一番騒いだのは『やはり』と言うべきか、『意外』と言うべきか悩むところではあるけど、親である卯木乃羽さん。


 奥様も勿論喜んでいたけど、その喜びは元息子な娘に寄り添って、一緒になって泣く事で喜びを表していた。

 卯木乃羽さんはもう・・・・・・・・うん。凄かった。


 最初は頻りに葵さんへと話しかけ、「良かった」とか「おめでとう」とか「幸せになれよ」みたいなことを言っていた。

 それはその後に卯木乃羽さんの一声で始まった祝いの為に行った宴会の場でも続いたんだけど、お酒が進むにつれその頻度は減っていき、喜びを爆発させ始め、声は次第に大きくなり、丁寧な言葉遣いは消え去り、動きは普段からは想像できないほどに大きく、がさつになっていた。


 最終的には春野くんとボディーガードの二人を巻き込み、4人での呑めや、歌えや、騒げやの状態に

 ・・・・。


 その辺りで騒ぎに嫌気がさしてきたのか奥様と葵さんは顔をしかめ始めていた。

 とうとう我慢が出来なくなった二人は、花斗夏さんを連れてその場を脱出。翌日まで姿を見ることはなかったので、たぶん自室に戻ったのだろう。若しくは、どこか静かな場所で穏やかに三人で祝ったのかもしれない。


 そんな皆が好き勝手にする中で、俺は今後の事を考えていた。

 お料理は美味しく頂いたけれどね!


 そんな感じの宴会で1人でポツンとしていると、それを見つけたスーパー卯木乃羽さんが突撃をかましてきた。


「善吉くん。・・・・・・・・・・・やっぱおめぇはすげ~やつだった!!!!感謝、感激、雨あられってな!!アッハッハッハッハッハッ!!!」


 信じられねぇ・・・・・・・。


 何時もの卯木乃羽さんを感じれたのは俺を呼ぶ時の名前くらいで、後はもう笑っては俺の背中やら肩やらをバシバシ叩いて、頻りに大声で話しては肩を組んで来て、また笑い始めたら叩いて・・・・・・お酒って怖い!!


 俺もお酒を呑めば多少テンションが上がって、人が変わってしまうけれど、ここまで変わることはないなぁ~。


 あっ。でも一回だけ記憶がなくなるまで呑んだことがあった。

 その後はその場に居た人たちが介抱してくれたらしいんだけど、「大変だったから2度と呑み過ぎるな」な~んて言われた。

 どれだけ大変だったのかわからないけれど、申し訳ない想いからそれからはキチンとセーブして呑むことにしている。けれど、今回は少し呑み過ぎたからそろそろ自室に・・・・・・離して?


「おうおう。どこ行くんだよ?葵もマイハニーもいつの間にか居ねぇしよ!!おめぇまでどこか行くなんてお天道様が許しても、俺が許さねぇ!!さぁ!呑めや!!!!」


 や、やめてけれ~!!!

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