第27話 【憂鬱】文化祭の出し物を、ギャルに任せた結果…… 1/2
「んじゃ、これから文化祭の出し物を、話し合うよん? 司会はうち、
めちゃくちゃ軽い調子でそう言って、二原さんは教卓に手をつき、ドヤッて顔をした。
黒板のそばには、学校仕様の眼鏡姿で、無表情にチョークをかまえた
そして二原さんの隣には、手持ち無沙汰な俺が控えている。
――ホームルームを利用した、文化祭の話し合い。その第一回。
文化祭の意見を出し合うとか、ただでさえ憂鬱だってのに。
こうしてクラスの前に立つことになるなんて……夢にも思わなかった。
「じゃー、誰か意見のある人、いるー?」
「はいよ!」
勢いよく手を挙げたのは、俺の悪友・マサ。
その表情は心なしか、キラキラと輝いて見える。
「ほい、んじゃ
「ズバリ言おう――『アリステ』のステージだ」
うわぁ……。
「『ラブアイドルドリーム! アリスステージ☆』――世界を席巻するこの素晴らしい作品へのリスペクトとして、俺は『アリステ』のライブステージを、女子生徒で再現することを提案する! 任せとけ……どの女子が誰の役に適してるか、俺が完璧なオーディションをしてみせるか――」
「却下よ」
マサの妄言をばっさり切り捨てると、結花は冷ややかな口調で告げる。
「出し物は教室でやるのよ? ステージなんて、狭くてできないわ」
ぐうの音も出ないほどの正論だった。
「うんうん、綿苗さんの言うとおりだね! じゃあ倉井は、お手つきで一回休み」
「お手つきってなんだよ!? 他のアイディアも聞けって! ライブステージが無理だって言うんなら、アリスアイドルに扮した女子生徒と握手会を――」
「倉井くん。黙って席について」
恐ろしいほど怜悧な、結花の一言。
さすがのマサも、これには無言で席につかざるをえない。
「いいねぇ、
「別に」
「そんな綿苗さんは、なんかアイディアとか、どーよ?」
「アイディア……そうね」
急に話題を振られた結花は、アゴに手を当てて思案する。
そして――相変わらず表情ひとつ変えずに、淡々と言った。
「この地域の名産品を調べて、パネルを作って展示をするとか」
びっくりするほど、真面目だった。
「いや、綿苗さん。高校の文化祭で、パネル展示だけはさすがに……盛り上がらなくないかな?」
「……じゃあ、
みんなに気付かれない角度で、結花が「べー」って舌を出してきた。
あ……これ、マジで拗ねてるやつだ。
「早く出したらどうなの? 佐方くん。さぁ、早く」
「い、いや……特に思いついてはないんだけど……」
結花からの圧に困っていると、二原さんがポンッと、手を打ち鳴らした。
「ねぇねぇ、みんな。倉井が言ってた、アイドルのステージ再現とかは無理だけどさ。そーいう可愛い格好をして、カフェとかやんのはどーよ? 男子は格好いい系で」
二原さんの思いつきに、クラスがざわざわっと沸き立つ。
「
「そそ。メイドに限らず、ハロウィン的にみんなで色んなコスプレして、コスプレカフェ! ってやるイメージ!!」
「おー。桃乃の案、悪くないね。普段、コスプレする機会とかないし、面白いかもー」
「うん! 文化祭でしか味わえない青春……先生もコスプレカフェ、良いと思うぞ!!」
熱血教師的には、コスプレカフェも青春の一ページなのか。基準が分かんねぇ。
「二原さん……私としては、それはどうかと。風紀が乱れるというか……」
なんとなく、コスプレカフェでまとまりかけた空気の中。
結花が、なんとも言えない表情を浮かべて――ぽそぽそっと言った。
「あれ? 綿苗さん、あんまり乗り気じゃない? まぁ、全員がコスプレしなくっても、バックヤードの仕事とかもあるし。分担するとかって手もあるかな?」
結花の微妙な空気を察したらしく、二原さんがフォローを入れる。
さすがギャル。こういう気遣いの速さは、本当に尊敬するよ。
だけど……。
「いや、全員が着た方がよくね? 完成度的に、そっちの方が絶対いいって!」
「そんなこと言って、あんたが色んな女子のコスプレを見たいだけっしょ、変態ー。でも……桃、あたしも全員着た方がいい気がするー。不公平になりそうだし」
「んー……まぁ、そういう意見もあるか……でも、そうだねー……」
結花に助け船を出したいからか、歯切れの悪い二原さん。
そんな二原さんの様子を見て――いたたまれなくなったんだろう。
結花が小さく手を挙げて、抑揚なく提案した。
「では、多数決でどう? 全員がコスプレをするコスプレカフェか、有志だけがコスプレをするコスプレカフェか……地域の名産品のパネル展示か」
パネル展示の意見、まだ生きてたの!?
――――と、まぁ。
こんな感じで、多数決という、一番公平な方法で決議を取った結果。
俺たち二年A組の出し物は……『全員がコスプレするコスプレカフェ』に、決定した。
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