第20話 和泉ゆうなが、自宅でファッションショー → 衝撃の結果 2/2

 ポニーテールに結った黒髪。

 細いフレームの眼鏡。


 少しつり目がちな瞳で、学校のときみたいな無表情で、綿苗わたなえ結花ゆうかはこちらを見ていた。



 ――背中がぱっくり開いたノースリーブのニットセーターという出で立ちで。



「……どう?」


 学校仕様のキャラに入り込んでるのか、淡々とした喋り方の結花。


 だけど格好は、露出の激しい蠱惑的なもの。



 ……背徳感が凄すぎて、言葉にならないんですけど。



「今回のゆうなに、寄せてみたわ」


「いや、確かに今回のイベントの趣旨にマッチしてるけどね?」


「……どう? 似合ってる……?」



 ひぃ!?


 露出してる肩を俺の胸元にぴとっと当てて、耳元で囁く結花。



 耳がぞくぞくして、全身が痺れたよ。マジで。



「いや、あのね? 学校の結花な感じで、そんな格好して迫られたら、さすがにドキッとしちゃうから勘弁――」


「ドキッと、するのね?」



 あ、やば。

 完全に結花の変なスイッチを押したやつだ、今の。



「待ってて。これから私……変わるから」



 ――――それからは、綿苗結花のファッションショー。


 もとい、コスプレ大会がはじまった。



佐方さかたくん。そんなにじろじろ見て……いやらしいのね」


 眼鏡ポニテにチャイナドレスで、無表情のままスリット部分を見せつける結花。

 隙間から見える白い生脚に、思わず生唾を呑み込んでしまう。



「佐方くんの、にゃんこよ……にゃう」


 眼鏡っのままネコ耳を付けて、にゃうにゃう言いながら、肉球付きの手袋で手招きしてくる結花。

 つり目だから、猫っぽさが増して、なんか犯罪臭がすごい。



「佐方くん……どんな運動がしたい?」


 いやいやいや?

 なんで学校の綿苗さんモードのまま、ツインテールにしたの?


 ブルマ姿のまま、上目遣いでそんなこと言われたら、俺の理性がぶっ壊れるからね!?



「佐方くん。これ……恥ずかしい」


 そりゃあそうだろうね!? どういう発想してたら、眼鏡の下にアイマスクをして、制服姿のまま紐で手を縛ってみようなんて思うのかな!?


 俺はSっぽい性癖とかないけど……新しい扉が開いちゃいそうなんだけど、マジで。




「にゃうにゃう♪」


 最後に、ウィッグを取っておうちモードになった結花は。

 猫耳&もふもふショートパンツ(尻尾付き)&お腹を晒したコスチュームで、手招きを繰り出すという、とどめの精神攻撃を仕掛けてから。



 いつもの水色ワンピースに着替えて、得意げな顔でリビングにやってきた。



「というわけで、ゆうくん! 和泉いずみゆうなと綿苗結花。どっちバージョンでも、色んな格好してみたけど……どれが一番、遊くん的には好きだった?」



 ジェットコースターに数十回乗った後みたいに、なんか気力も体力も持っていかれた俺は、ソファでうな垂れたまま返事をする。



「それを聞いて、どうする気なの……?」


 和泉ゆうなのときは、本当にゆうなちゃんが現実に現れたみたいで、セクシーなのもキュートなのも、ただただ可愛かった。


 綿苗結花のときは、いつも学校でお堅い彼女が、実は俺の前ではこんな格好をしてて……みたいな背徳感で、頭がどうにかなるかと思った。



 どっちが上とか下とか、俺の中では特にないんだけど……。



「遊くんが一番気に入った格好を、普段着にしようかなって。だって、私……いつだって遊くんに、嬉しい気持ちでいてほしいもん!」



 結花のまっすぐな、その言葉に――俺はなんだか、胸が熱くなる。


 だから俺は、まっすぐに結花のことを指差した。



「え? なに、遊くん?」


 きょとんとする結花に微笑み掛けながら、俺ははっきりと告げる。



「普段着だったら、いつものそれが一番好きだよ。リラックスしてて、笑ったり怒ったり、ときどき変なことしたり……そんないつもの結花といるのが、一番落ち着くからね」



 言ってから、とんでもないことを言った気がして、結花から目を逸らす。


 さすがにちょっと、格好つけすぎだったかな。



 ……なんて、思ってると。



「遊くん、大好きー!!」



 結花が飛びつくようにして、俺のことを抱き締めてきた。


 ふと視線を落とすと、俺の胸元に顔を押し当てて、子犬のように笑ってる結花。



 やっぱり、こんないつもどおりが……一番落ち着くんだよな。




「あ、でも。普段着以外でも着てほしい服あったら……言ってね? あ、あんまり際どいのは恥ずかしいけど……できるだけ頑張るから」



 そこは変わらないのな。


 まぁ、変なところで気合が入ってるのも含めて――いつもどおりの結花、なんだけどね。

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