第3話 【教えて】今日がなんの日か、分かる人いる? 1/2
「問題ですっ! さて
学校から帰ってきて、リビングに寝そべってマンガを読んでいると。
なんか突然、
顔を向けると、腰に手を当てたポーズで、やたらドヤッとした顔してる結花。
んー……今日?
なんかあるか、今日?
俺も結花も誕生日ってわけじゃないし。
『アリステ』の新規イベントがはじまったわけでもないし。
『アリステ』がリリースされた記念日? ……いや、リリース日は冬だしな。それに、そんなの俺が気付かないわけがない。
駄目だ、まったく思いつかない。
「残り十秒だよー」
「いや、思いつかないんだけど本気で。明日だったら、七夕だけど……」
「ああー、惜しい! もう一声だよ遊くん!! 七夕の前日といえば?」
「七夕の前日といえば? 七月六日? え、なんかある?」
「七月六日! それそれ! いいところまで来てるよっ!!」
いやいや。七月六日は、ただの事実でしかないでしょ?
ひたすら頭をフル回転させる俺。それでも、何も思いつきやしない。
もうどうしようもないので、俺はおそるおそるギブアップ宣言。
「ごめんなさい、降参です。正解はなんなの、結花?」
「ふっふっふっ。正解はね……でけでけでけでけ、じゃんっ!」
なんか自分でドラムロールっぽい声を出しはじめた。
やたらテンション高いな、うちの許嫁。
とかなんとか考えてると、結花は人差し指を立てて、得意げな顔で言った。
「今日はなんと、なんと……私が遊くんの許嫁になった、三か月の記念日でした!! きゃー、ぱちぱちー!!」
――――なるほど。
それは当てられないわ、絶対。
なんか一人で大盛り上がりしてる結花を見ながら、俺は努めて冷静に返す。
「言われてみれば、初めて会ったのが始業式の日だったもんな。確かにちょうど三か月だけど……そこまで盛り上がることなの?」
「盛り上がるよ、三か月だよ!? アニメの一クールが終わるくらい、一緒にいたってことだもん。そんなの……嬉しいに決まってるじゃんよ!」
そう言って頬に手を当てる結花は、とろけたみたいな笑顔。
そんな嬉しそうな顔を見てたら……なんかこっちの方が恥ずかしくなってくる。
「ま、まぁ……三か月、なんだかんだで早かったね。三次元女子と一緒に暮らして、こんなに長く持つなんて、正直思ってなかった」
「まだまだ、これからの方が長いよー? なんたって私は、いずれ遊くんのお嫁さんに……生涯の伴侶になるんだもんね!!」
当たり前のようにそう言って、結花が澄んだ瞳で俺のことを見る。
水色のワンピースの肩のあたりで、さらさらの髪が揺れている。
結花の頬が、少しだけ赤い気がするけど。
……多分、俺も同じような顔してるんだろうな。
普通だったら恥ずかしくて言えないような言葉でも、結花はいつだってストレートに口にする。
そんな素直な結花だからこそ。
三次元女子が苦手な俺でも、一緒にいて安心できるんだと思う……多分。
「あー! 遊くん、なんでそっぽ向くのさー?」
恥ずかしくてつい視線を逸らした俺をめざとく見つけると、結花はぐいぐいっと腕を引っ張ってきた。
結花の体温がじかに伝わってきて、余計に落ち着かないんだけど。それ。
「もー、遊くんってばー。三か月記念日が盛り上がるのは、まだこれからなんだよ?」
「まだこれから? って、何するつもりなの?」
「ふっふっふー……それは言えないなぁー」
ちらっと結花の顔を見ると、口元をきゅるんとさせて、わざと視線を逸らした。
かと思うと、ちらっとこっちを見てくる。
だけど視線が合うと、また視線を逸らして。
ちらっ。
――わざとだな、これ。
俺に気にしてほしい空気がばりばり伝わってきて、思わず笑ってしまう。
「気になるから教えてよ、結花」
「もー、しょうがないなー、遊くん」
結花の要望どおり尋ねると、結花は得意げな顔で、くるりとこちらに向き直った。
そして、無邪気な顔で笑って。
「三か月を記念して――お祝いパーティーしようよ、遊くん!」
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