第28話 【画像】スカートから見えそうで見えないアレ 2/2

「…………ねぇ、ゆうくん?」



 ぽつりと呟いて。


 結花ゆうかは声を震わせながら。


 おそるおそるといった調子で――言った。



二原にはらさんのパ、パンツが、見たかったの……?」

「真剣な顔で何言ってんの!?」



 予想の斜め上な発言に、俺はつい素っ頓狂な声を上げてしまう。

 だけど結花は、極めて真面目な表情で。


「だ、だって! 遊くん、絶対に二原さんのスカートのとこ、見てたじゃん! 中が見えないかなーって顔、してたよねっ!?」

「だから、そんなこと、してな――」


 いや……これ以上、言い逃れをしても無駄か。


 もうこうなったら仕方ない。


 俺は正直に、白状することにした。



「……確かに俺は、スカートが短いなーって、気にはなった。だから、反射的に視線がスカートと脚の境目のところにいった。それは認める」


「うわーん、やっぱりそうなんじゃんよぉ!!」


「でも、それは二原さんだからとかじゃなくって! あくまでも反射的な行動でっ!! 生理的な現象なんだってば!!」



 そこだけは分かってほしい。


 俺は二原さんに欲情したんじゃない。


 あくまでも……『ミニスカートから覗く生脚』というシチュエーションに惹かれただけなんだ。


 男の子だったら、誰でも同じ反応をするから。本当に。



「…………そうなの?」


 目元を手で覆ってた結花が、ちらっとこちらに視線を向けた。


 特に泣いた形跡はない。

 嘘泣きだったか、やっぱり。


「本当。二原さんだからとかじゃなく、見えそうだったから、つい視線がいったの」


 この説明だと、パンツを見たかった自分を認めたことになるけど――仕方ない。


 だってさ、考えてみて?

『二原さんのパンツを見ようとした』と、『見えそうなパンツを見ようとした』。


 ほら、意味合いが全然違うからね?


「じゃあ遊くんは、二原さんのパンツが見たかったわけじゃ……」

「ない。断じて違う」


 俺は極めて男らしく、言い放った。


 このときの俺は、とても凜々しい顔をしていたことだろう。

 そんな潔い俺の姿を見た結花は、ゆっくりと口を開けて――。



「…………じゃあ。私の、だったら?」

「はい?」



 予期しない流の連続に、さすがに変な声が漏れてしまう。


 そんな反応が恥ずかしかったのか、結花の顔がカーッと赤くなっていく。


「わ、私の……だったら。た、たとえば、二原さんと私が、同じスカート穿いてて、同じ格好で座ってて……そしたら遊くんは……私の方が、見たい?」


 たどたどしい口調でそう言うと、結花はそっと自分のスカートの裾に両手を添えた。



 そして――ゆっくりと。


 スカートの裾がまくれ上がって。


 結花の白くて細い、その魅惑の脚が覗いてくる。


 やめさせなきゃ。


 そう思ってはいるけど……声が出せない。


 だって、さっきまでと違って――ドキドキしすぎてるから。


 二原さんのときには感じなかった、胸の奥から湧き上がってくる変な感覚が……俺の頭を麻痺させてしまってるから。



「……うー……」



 そうして――あともう少しで、スカートの中が見えそうってところで。


 ピタッと結花の手が止まった。



「……遊くんの、ばーか。えっちー……」


「いやいや!? おかしいでしょ、その言い分は!? ハニートラップだよ、これ!?」


「……うー……ごめんなさーい……」



 必死に弁解しようとする俺に対して、結花はぷるぷると身体を震わせながら。


 上目遣いに、ぽそっと――呟いた。



「やっぱ、恥ずかしい……」

「当たり前でしょ!? いいから、スカートを戻しなってば!」



 そんなこんなで。

 スカートをきちんと整えた結花は、ソファに飛び込んで、クッションに顔を埋めた。


 さすがにやり過ぎて、恥ずかしくなったんだろう。

 顔を隠したまま、なんかもごもご言ってる。


「あぅぅ……」

「ったく。変な対抗心を燃やすか……ら……」


 言い掛けて。

 俺は思わず、言葉をなくした。



 ――――だって。


 無防備にソファに飛び込んだ、結花のスカートが、ぴらっとめくれて……。



「……ん? 遊くん、どうした……の……っ!?」



 結花の絶叫が、家の中に響き渡る。


 ぽかぽかと、俺のことを叩きまくってくる。


 だけど俺の頭の中は、『白』一色に染まっていて……。




 しばらく他に、何も考えることはできなかった。

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