第18話 陽キャに誘われたんだけど、どうやって断ったらいい? 2/2
後ろから聞こえてきた冷たい声に、反射的に振り返った。
そこには――眼鏡の下の瞳を、キリッと吊り上げて。
ポニーテールに結った髪を揺らしつつ、こちらをじっと睨んでる
「わ、
「私も、行く」
有無を言わさぬ迫力で、結花がきっぱりと言い放つ。
普段は絶対、こういうコミュニティに入らないであろう結花が。
なんか知らないけど、鬼気迫る表情で――カラオケに混ざろうとしている。
うん。極めて怪しいよね。
「お、おいおい!
マサがガクガクと、俺の肩を揺すった。
俺は冷や汗を掻きつつ、必死に言い訳に頭を巡らせる。
そんな中、
「えっと……どうしたん、綿苗さん?」
まずい、これは結花に任せちゃ駄目な流れだ。
俺は慌てて、結花にパスを出す。
「あ……ああ! 綿苗さんも、カラオケ好きなのかな?」
よし、結花。『カラオケ好き』って設定でいこう?
そうすれば、「俺が行こうとしてたからついてきた感」が消えるから。
「いえ。カラオケは、そこまで」
はい、パスミス!
「ん? そんなにカラオケ好きじゃないけど、来てくれんの?」
「ええ」
二原さんの質問に、無機質な声色で答える結花。
「あーそっかー。綿苗さんも、みんなと親睦を深めよう的なやつかー。いやー奇遇だねー。俺とマサも、親睦を深めようってしてたとこなんだよー」
我ながら棒読みだけど、俺は懸命に結花へとメッセージを送る。
よし、結花。『みんなの輪に混ざろうと思った』って設定でいこう?
そうすれば、「俺が行こうとしてたからついてきた感」が消えるから。
「いいえ。
はい、オウンゴール!
「え。それってどういうこと!?」
「綿苗さん、佐方くんとそんなに仲良かったっけ?」
「おい、どういうことだよ遊一!?」
騒然となる現場。
そんな中、物凄い固い表情で立ち尽くしてる結花。
あー、駄目だこれ。結花、緊張で全然頭が回ってないやつだ。
ちょっと諦めの境地に達して、俺は深くため息を吐く。
――そんな、なんとも言えない空気の中で。
「綿苗さん……まーじーでー!?」
二原さんがキラキラと目を輝かせて、結花の手をギュッと握った。
そして、結花にくっついて大はしゃぎする。
「やばっ、綿苗さんと遊べるとか嬉しいっ! うちさ、授業以外で綿苗さんと話したことないっしょ? だから、いつか遊びたかったんだよっ!!」
「え、ええ……」
陽キャなギャルの押しの強さに、ちょっとだけ怯む結花だけど。
意を決したのか、こくりと頷いた。
「カラオケ、私も行く」
二原さんが、歓声を上げる。
それに触発されたように、周りもわいわいと盛り上がりはじめる。
「えっと……どういう流れだ、これ?」
マサが首をかしげてるけど無視して、慌てて結花に小声で話し掛けた。
「……どういうつもりなの、結花?」
「……私も
「……怪しまれるでしょ、こんな無理やりだと」
「……だって。みんなだけ遊くんと遊ぶのは、なんかずるいじゃんよ」
俺の言い方が気に入らなかったのか、結花はぷくっと頬を膨らませる。
そして頬を赤くして、上目遣いにこちらを睨みつけてきた。
いや、顔! その顔は駄目なやつ!!
かんっぜんに『素の結花』出ちゃってるから!
「ん? 佐方、どったの?」
「いやあ!? カラオケ楽しみだねぇって、綿苗さんと話してただけだよ!?」
二原さんに向かって、俺は慌ててフォローを入れる。
そんな俺の陰に隠れて。
結花はちっちゃな声で――言った。
「……遊くんとカラオケ、初めてだね。楽しみっ」
そうして、素の顔でえへっと、結花がかすかに笑った。
だーかーら!
危機感なさ過ぎだってば!!
こうして、結花の天然っぷりにハラハラさせられつつ。
波乱のカラオケ編に続くのか、これ……はぁ。
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