第12話 「あ、これ永眠するな」って起こし方の特徴 1/2

『朝だってばぁ。起きてー、起きてよー。もぉ、ゆうながこんなに起こしてんのにぃー』



「やば……可愛い。可愛さの極みだ……」

 俺はスマホを凝視しながら、ぼそぼそと独り言を口にしていた。


 ついさっき回した『ラブアイドルドリーム! アリスステージ☆』のガチャ。

 課金したわけでもないのに、普通に『ゆうな(ノーマル)』が来た。


 一発でゆうなちゃんとか……これが運命か……。



 ちなみに現在やってるのは、『アリスアイドルたちが、あなたを起こしにきちゃうぞ!』キャンペーン。


 この声があれば、俺の明日は――良い目覚めになるだろう。

 あるいは、一生朝日を拝めないか。キュン死的な意味で。


「……ゆうくんって普段、何時頃に起きてるの?」

「うわっ!?」


 リビングのソファに横になってた俺は、急に声を掛けられて起き上がった。


 風呂上がりの結花ゆうかが、寝間着用のワンピースになって、こっちを見てる。

 いつもより髪の毛がぺたんとしてるから、なんかあどけない感じ。


「遊くん、大体いつも、私より早く起きてるよね?」

「あー。大体、七時にアラーム仕掛けてるから。それくらいかな」

「寝起きは、結構いい方?」

「あー、まぁ……結花は?」

「私? 私は、結構悪いかな……しばらくまどろんでようやく、って感じ」


 そんな、当たり障りのない会話をして。

 それぞれが自分の部屋に帰っていく。


「……遊くん」


 自室のドアを開けたところで、結花に声を掛けられる。

 結花の方を見ると、なんだか――瞳をキラキラさせながら、俺の方を見ていた。


「明日、覚悟しててね?」

「……はい?」



 なんの覚悟?

 よく分かんないけど……まぁ、覚えてたら。


          ◆


 ――――ん。


 あ、なんか今日はアラームが鳴る前に目が覚めちゃったな。


 俺は眠い目をこすりながら、布団の上の方に手を伸ばし、目覚まし時計を取った。


 時間は――六時五十五分か。

 ちょっと早いけど、二度寝するには微妙な時間だな。


 よし……起きるか。

 というわけで、俺は布団に入ったまま上体を起こした。


 そこには――結花の顔があった。



「うわあああああ!?」

「きゃあああああ!?」



 お互いに顔を見合わせて、大絶叫。

 そのまま布団から転がり出た俺は、掛け布団の上にぺたんと座ってる結花を見る。


「え? え? なんで結花がここにいるの?」

「どうして……六時五十五分なのに……っ!」


 普通に質問したけど、結花はなんか悔しそうにうな垂れてて、答えやしない。


 えっと……あれ? こんなことになる伏線とか、あったっけ?


 昨日は確か、ゆうなちゃんのノーマルカードを手に入れて、はしゃいでて。

 そのあと結花に、いつも起きる時間を聞かれて。

 で――「明日、覚悟しててね?」って言われて。


「……なるほど」


 つまり、こういうことか。


 結花はアリステのキャンペーンを模倣して。

 俺の起床時間を聞いた上で、こっそり起こそうと思い、部屋に侵入してきたと。


 相変わらず、思いつきだけで行動するな。この子は。


「……やり直しを、お願いします」

「はい?」

「だって遊くん、予定より早く起きるんだもん! ずるいよ!!」

「ずるくはないな!? 俺が悪いみたいな感じなの、これ!?」



「とにかく、もう一回――もう一回だけだからっ!」

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