も~っと! 4-3「やりすぎじゃない、こいつら?」

 フラフープから放たれた凄まじい雷が、大地を穿つ。


 デスクトップパソコンから放たれたアバターが、ノワールの身体に力を宿す。


 オッドアイから放たれた無数の光線が、湖を豪快に削る。


 舞い散る砂塵。燃え上がる炎。耳をつんざく轟音。




 …………えっと。


 やりすぎじゃない、こいつら?



 取りあえず、巻き込まれる前に春苺はるいちごを逃がしておいてよかったよ。マジで。



「ノワール、もう一回アバターを送るっすよ! 魔法のデスクトップパソコン『ファッキントッシュ』――『エナジーアバター』!!」



 ターンッと、PCがエンターキーを叩くと、ノワールの形をしたアバターがデスクトップパソコンから飛び出す。


 そのアバターはノワールの身体に触れると、まばゆい光を放って、吸収された。



「PC、貴方より授かった命の欠片……しかと受け取りました」


「これまでの戦いで受けたダメージは、これで全回復っす。さぁ、ノワールの本気……お見舞いするっすよ!」


「ええ」



 ノワールとPCが、笑顔で連携を取っている。


 最初はロック気取りの引きこもり・百合紗ゆりさが、子どもなんかと組んでられないって……もゆに対して不満だらけだったのに。


 今ではこんなに、お互いを信頼し合って、チームワークで戦えてる。



 そんな後輩の成長に、思わず涙が出そうだよ、わたしは。



「闇に堕ちた哀れな魔法少女――リバイバルトップ。わらわの究極の魔法で、貴方の闇を晴らしてみせましょう。闇を打ち払えるのはいつだって――それよりも濃い、漆黒」


「面白いじゃん……いいよ、おいで! あんたの究極魔法とやらを、うちの究極魔法がぶち壊す! そして、うちの方が最強だって――教えてやるんだから!!」



 ノワールが左目を覆い隠していた髪の毛を、ゆっくりと掻き上げた。


 外気に晒されるのは、金色の瞳――魔法のオッドアイ『夜光虫やこうちゅう』。



「嗚呼……魔天の疼きが闇夜に踊り……狂った宴が今宵もはじまる」



 中二病全開な呪文とともに、世界は闇に包まれる。


 鈴の音が、リンと鳴る。そして浮かび上がる、二つの金色の光球。


 リン、リン、リン――鈴が鳴るたびに光球は増えていき。


 やがてノワールの周囲を覆い尽くす。



 その光の正体は――ノワールが魔力で造り上げた、獅子に似た漆黒の獣たちだ。



 一方のトップは、両手を開き、上下に二つのフラフープを構えた。

 上にはホワイトフープ、下にはブラックフープ。



「魔天の力が天地を揺らし、歪んだ世界に一人立つ」



 巨大な魔力を帯びた球体が、目の前に現われる。


 その球体がホワイトフープに吸収される。


 すると、今度はブラックフープから現われて……再びホワイトフープに吸い込まれる。


 二つのフラフープによる魔力回路によって、球体は無限にエネルギーを増していく。



 そして最後に、トップは二つのフラフープを重ねて……正面に向けた。



「――ノワール・ベルキルヘルスマイル」



 魔法のオッドアイ『夜光虫』から射出される、レーザー光線。

 その光線と伴走するように、魔力の獣たちも一斉に『敵』を目掛けて飛び掛かる。



「トップ・オーロラスピニングエナジーバースト!!」



 最大限まで魔力を高めた球体が、ブラックフープから神速の勢いで撃ち出される。

 オーロラのようにいくつもの色を弧に描きながら――球体は『敵』に向かっていく。




 ――――そして。



『ノワール・ヘルキルベルスマイル』 と『トップ・オーロラスピニングエナジーバースト』という、二つの必殺技が激突した結果。


 ものすごい魔力の爆発が起こって……。



 ――――山ひとつ、吹っ飛んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る