第11章閑話 神域にて佇む者11
「ようやく終わりましたね」
機構天使の討伐が終わったことを確認したマキナはそう呟く。
「あれからどれだけの時間が経ったのでしょうか。正確には分かりませんが、それを忘れるほどに永かったことは確かですね」
永い時を経て、ようやく果たされた願い。
最早、どれだけの時間が経ったのかすら忘れてしまったが、その果てに得られた結果は望まれたものだった。
「これも全て静観派の我々の願いを果たそうと尽力してくれた精霊竜とその継承者、並びに協力者のおかげです」
もちろん、この結果が得られたのは、その任を直接請け負った精霊竜と、それを継承して尽力してくれた彼女達のおかげだ。
彼女達の協力なくしてはこの結末には至れなかった。
「直接伝えることは叶いませんが、謝意の表明はしておきましょう」
地上に干渉することができない以上、直接言葉を伝えることは叶わない。
だが、謝意があることを示すために、その表明だけはしておくことにした。
「協力してくださった皆様、ありがとうございました。そして、お疲れ様でした」
マキナは誰にも伝わらないことを理解しながらも、その場で謝意を述べる。
「あなた方はもう自由です。果たすべき使命はもうありませんので、これからは勝ち得た自由を存分に堪能してください」
静観派の神々からマキナに、マキナから精霊竜に、そして、精霊竜からフィルレーネに引き継がれた願いは永き時を経て果たされた。
課せられた使命から解放された彼女と、その協力者はもう自由なので、これからは自らの力で手にした自由を享受してもらいたいところだった。
「それはそうと、これで私が果たすべき役割もほとんど無くなりましたね」
残された静観派の神として果たすべき役割であった、残された機構天使の殲滅と地上の監視。
機構天使の殲滅が済んで、一人でに歩き出した世界に監視も必要無いので、彼女が果たすべき役割には終わりが訪れていた。
「終わりはいつか訪れます。もちろん、私を含めた神々も例外ではありません」
どんな物事にもいつか終わりは訪れる。
それは至極当然の摂理であり、神々でさえその例外ではない。
永く続いた神々による管理も、争乱で以て終わりを告げたのだから。
「そして、今がその時です」
ここに来るまでは永かったが、最後に残った彼女の役目にも今終わりが訪れる。
「私が地上を監視する意味はもうありません」
機構天使の殲滅が果たされた以上、地上を監視する必要はもう無い。
「ですが、世界の、そして彼らの行く末を見守ることぐらいはさせていただきます」
一人でに歩き出した世界が、使命から解放された彼女達が、新たな世界に転生した彼らがどのような結末を迎えるのか。
残された者として、それらを最後まで見届けることにした。
「……さて、話はここまでにしましょうか」
マキナはこれ以上喋るようなことも無いと、話を止めて正面を向き直す。
「それでは、神々の手から離れて独立した世界に幸のあらんことを」
そして、最後にそれだけ言うと、世界の行く末に願いを込めながら、地上を映した空間を閉じたのだった。
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